釈尊と瓦師
 
 釈尊が大昔、仏となる以前の修行時代に瓦師となって、名前を大光明と称していた。その時に仏様が出世されて、仏名を釈迦文仏といい、弟子衆を舎利弗、目連などと名付けていた。
 時に彼の釈迦文仏が弟子衆と共に瓦師の所に来られ、一夜の宿を貸してほしいと仰せになられた。よって、この瓦師は「大変ありがたいことです。このような不浄な所に来られ、その上、宿を貸すように仰せになるのは大変ありがたいことです」と感激した。
 やがてきれいな草を敷いて仏と弟子衆に座っていただいた。そして油火を点(とも)して明かりを供養し、さらに石蜜のコンズといって、砂糖をトロトロ、胡麻の油のように練(ね)った物を仏と弟子衆に供養申し上げた。
 この時、大信心を発(おこ)し、大願を立てて「願わくばこの功徳をもって未来悪世に成仏して、父母、弟子等も今仏の如くならん」と誓いを立てた。この願力に報いて今日、御名を釈迦仏と申し、弟子も舎利弗、目連と名付けたのである。
 これは竜樹の大論に引かれていて、蔵教の因を明かしたものである。
 今日、釈尊が仏となったのは、三僧祇(さんそうぎ)の間、仏を供養したからである。初僧祇に七万五千仏、二僧祇に七万六千仏、三僧祇に七万七千仏を供養し、しかもその間、六度を行じて衆生を利益した。このように万劫の間、相好の因を修し、功を積み、徳を満じたからである。
(歴代法主全書四巻)
            (高橋粛道)