令和6年8月16日付

師は針、弟子檀那は糸のごとき素直な信心を

念願のタイ事務所で精励

 東南アジアの中央部に位置するタイ。隣国のマレーシア、シンガポールには一九九〇年代から御僧侶常駐の寺院、布教所が次々と建立されるなか、このほど昨年十月にようやく念願のタイ事務所が首都バンコクに開設された。
 今回は、タイ事務所での各種法要の御膳準備を担当するシリラット・マヤラートさんに話を伺った。
  
●あなたが日蓮正宗の信仰に出会った経緯をお話いただけますか?

シリラット
 弟の入信がきっかけでした。
 弟から日蓮正宗の信仰を勧められましたが、当時の私は別の信仰を持っており、信仰はどちらでもいいと思っていました。日蓮正宗の信仰がすばらしいなら来世にすればいい、とさえ考えていました。そのようななか、信徒の集まりに誘われました。
 その時、幹部の人の「来世では遅すぎる、今すぐ実践すべきだ」との確信ある言葉に感激し、御本尊様だけを信じ、御授戒を受けることを決意しました。

●入信によって、どのような変化があったかを聞かせてください。

シリラット
 以前の信仰と異なり、御題目を唱えると心が落ち着き、安らぎを感じました。
 常日頃、御本尊様には「将来、自分の健康に何か深刻な問題があるなら、それが手遅れになる前に知らせてください」と祈っていました。過去に何度かガンを疑われる兆候がありましたが、いずれも早期発見により大事にいたらず、お陰様で現在にいたるまで健康に過ごすことができています。また、以前は怒りっぽい性格で周囲に不快感を与えることもあったようですが、今では、性格が優しく穏やかになったと言われます。これもはすべて、御本尊様から戴いた功徳だと実感しています。

●御僧侶常駐の布教拠点が設立されるまで、長い困難な時期を経験されたと思います。その時期の経験をお聞かせください。

シリラット
 私たちのタイでは、それまで地縁や入信の縁などにより六つの信徒組織に分かれて、別々に活動していました。
 当時、御僧侶から御指導をいただけたのは、出張御授戒でお越しになる二、三カ月に一度のみでした。私たちは御僧侶がお越しになるのを心待ちにして、御指導をひと言も聞き漏らすまいと励んでいました。
 活動としては、私のグループでは、毎月第一日曜日と第二日曜日に、タイ全土から拠点としていた会館に集って勤行・唱題を行い、常に戒壇の大御本尊様を渇仰恋慕しつつ信仰に励んでいました。
 しかし、今思えばその時は、日蓮正宗の教えを、自分たちの思い込みに基づいて間違った形で信仰していた部分もあったかもしれないと思います。だからこそ、常日頃から間近で御指導くださる常駐の御僧侶″をお迎えすることが、長年の願いでした。
 二〇二〇(令和二)年二月に待望の常駐御僧侶として堀沢良充御尊師をお迎えした時の喜びは、今でも忘れられません。
 ただ、それも束の間で、直後のコロナ禍により自由に対面活動ができなくなりました。以後二〇二三年十月の事務所開設までの約三年半にわたり、オンラインによる活動が主となりました。
 それでも、毎日御尊師と一緒に勤行をさせていただけ、毎週のように御指導をいただくことができるのは夢のようでした。お陰様でコロナ禍による孤独を感じることなく過ごせ、この間、常にタイ全土から四百名以上がオンラインでの活動に参加したので、御尊師との絆が深まりました。また、信徒同士の一体感が生まれ、事務所開設の気運が高まりました。

●開所法要の感想をお聞かせください。

シリラット
 私たちタイ信徒にとって、経験したことのない大きな法要でした。
 約八十名のボランティアスタッフが協力して任務に着きました。スタッフ一人ひとりが、六つの組織の垣根を越えて御僧侶のもとに団結し、御本尊様をお迎えするために全力を尽くしました。私を含めて七名が、献膳班の第一期生として、御本尊様にお供えする御膳をお作りする任務を仰せつかり、堀沢御尊師から御膳の作り方を教えていただき、一から学びました。
 それまで、献膳は総本山に登山参詣した時に、非常に遠くから拝見するだけでしたから、そのような伝統ある儀式をタイで行うことができるとは、想像もできませんでした。
 法要で、献膳の儀が無事に終わり、御宝前の御扉が開かれ、御本尊様を初めて拝した時、感動のあまり自然と涙があふれてきました。開所法要の成功は、私たちの異体同心の証であり、タイ広布の新たな出発点となる、思い出深い出来事となりました。

●今後の決意について聞かせてください。

シリラット
 私たちは常駐御僧侶をお迎えし、タイ全土の信徒が一望に集う事務所の開設を待ち焦がれていました。
タイの諺に
「糸は針に沿うべし)」とあります。願いが叶った今、これからは常に指導教師の御指導に忠実に従って進む「糸」となり、心を合わせて事務所をお護りしていくことを決意しています。
 毎月の御報恩御講参詣も少しずつ定着してきました。私はこれまで学んだ献膳の作法を厳格に守って心を込めて御膳を作り、次に任務にあたる第二期生にすべてを確実に伝えてまいります。
 そして、御本尊様のすばらしさをさらに多くの方に知っていただけるよう、唱題を重ねて折伏に取り組んでまいります。