令和6年6月16日付

皆ですべてを乗り越える信心

「4月3日台湾花蓮地震」乗り越え歓喜の登山

 花東布教所は、二〇〇八年に妙照院花蓮分院が開院され、その後の精進が実り、二〇一〇年七月十八日、花蓮県・台東県の法城・花東布教所として開所された。
 今年で開所十四周年となる。土地柄、所属信徒の半数以上は先住民である。
 今回紹介する呉さんは、花東布教所の一本部三支部六地区のうち、花一支部の主任を務め、花東布教所の折伏・育成の活動を支えている。
  
●入信の経緯と自己紹介をお題いします。

 私の両親が先に入信し、妻も友人の縁で入信していました。私は両親と妻に折伏され、約三十年前に二人の息子と、台北にあった事務所で御授戒を受けました。
 現在は、花一支部の主任と法要処長(法要・行事準備班)の役職をお受けしています。妻は花東本部の幹事(日本の支部講頭に該当)で、息子・孫たちは青年部や少年部の活動に積極的に参加してがんばっています。

●日頃は特にどのようなことをがんばっていますか。

 勤行・唱題と家庭訪問です。毎日の一時間唱題会、水曜日の二時間唱題会(朝・夜)にほぼ毎日参加するほか、主任として、新型コロナウイルス感染症等のため出てこなくなった信徒の激励、未入信家族の折伏、御報恩御講参詣の啓蒙を主な目的として、家庭訪問に力を入れています。
 まず、以前に一時的にでも信心に励んでいた人、法事・御祈念栢いを申し込んだことのある人など、一分の信心がある人の御講参詣に繋げるために訪問しました。また、「あの人が少し体調を崩している」などという話が耳に入ると、すぐに責任者の近藤成観御尊師にお知らせし、お供して訪問します。
 家庭訪問は毎回が順調とはいかず、車の中で御尊師と少しシュンとしながら帰ることもありますが、皆で激励し合って続けています。御尊師と、百件ほどはご一緒しました。
 家庭訪問が実を満び、御講参詣者はコロナ禍前より大幅に増え、三月は百七十名以上と開所以来最多でした。未入信家族の折伏も実ってきました。
 お宅に伺わないと判らないことや顔を合わせないと話せないこともあります。電話連絡に甘えず、直接顔を合わせることが大事だと感じます。また、勇気を出して参詣してくれた人が、持続して参詣できるようにすることも課題です。日頃はもちろん法要の日、御尊師・役員たちで声かけをして、誰とも話をせずに帰る人がいないよう心がけます。
 法要処長として法要・行事の準備を行いますが、青年部に声をかけ、若い人を育成しながら行います。

●地震はたいへんでしたね。その時の状況を教えてください。

 四月三日の朝、花蓮で大地震が発生しました。地震の多い場所ですが、今回は特に大きく余震も多かったです。直ちに御尊師から全役員に連絡があり、信徒の安否確認を行いました。震度六以上だった所に約五百名住んでいましたが、ケガ人も大きな被害もなく、御本尊様に守っていただいたと思います。
 しかし、一番大事な花東布教所が大きな被害を受けました。布教所はビルの六・七階で、七階が本堂です。駆けつけると、御厨子を除いたすべての物が倒れていました。六階も水道管の破裂で水浸しでした。ビルそのものが大きな被害を受け少し傾いていて、これはまずいと思いました。県政府(県庁)から調査が来て危険建造物に指定されると、立ち入れなくなります。御尊師と相談して数人集め、そうなる前に御本尊様、御宝前の仏具をはじめ重要な書類を搬出しました。
 さらにお手伝いさせていただこうとしたら、御尊師に「最重要なものは搬出できた。余震も多く危険なのでけっこうです」と言われました。しかし、布教所にはまだまだたくさんの物があって御尊師がお一人で片づけを進めることは想像できました。その後、二十数名が集まって椅子、電球の一つも残さず、本堂にあった物はすべて搬出できました。特に大事な物は御尊師が厳護され、それ以外は役員宅に分けてお護りしています。ほどなくしてビルの取り壊しが決定し、全面立入禁止となりました。

●地震後はどのように信心修行に励んでいますか?

 地震直後は必死で、あまり感じませんでしたが、だんだん悔しさや不安が込み上げてきました。しかし、御尊師の御指導のもとに御講を各地区役員宅で七回に分けて奉修し、各地区で唱題会も毎週行い、歩みを止めずにがんばることになりました。
 布教所ではない場所での御講には、その場所への案内、部屋の広さ、駐車場の問題と、たいへんなことも多いですが、お守りいただいたという実感、布教所が一番たいへんなのだという思いもあってか、四月の参加人数は延べ百九十六名、五月はさらに増えて二百二名でした。
 また、四月二十七日から三泊四日の行程で団体登山が予定されていました。御尊師からは、「たいへんな状況だと思いますが、大御本尊様と御法主上人猊下へ無事を御報告し感謝申し上げる特別な登山だと思って、できるだけ参加してください」と御指導がありました。橋の崩落や土砂崩れの影響で台湾内での移動に時間がかかるので、行きと帰りに一日ずつ追加した五泊六日の日程に変更しました。台北の松山空港に車と電車で行けなくなったので、飛行機で台北に行きました。登山者の減少を心配しましたが、当初の予定通り、開所以来最多の二十五名全員で登山できました。総本山は天気もよく、喜びや感動がひときわ大きな登山となりました。団体登山は、長時間の行程をともに行動し、心も清々しい状態なので、信徒同士の仲も深まりやすく、有り難い機会です。

●今後の抱負をお願いします。

 地震により、布教所を護るため、広布前進のためにどうするのかを真剣に考えられました。これまで起こった様々な問題は些細なことだと感じました。おそらく皆もそうだと思います。
 現在、花東布教所は今までで一番、活気があります。御法主日如上人猊下の御指南をしっかり拝し、あらゆることを必ず乗り越えて、台湾各地の寺院のように立派な講中を築けるようがんばりたいと思います。