令和5年4月16日付

僧俗異体同心 コロナ禍も前向きに励んで

慶祝記念総登山へ全土から

 インドネシア共和国は赤道をまたぐ東西五千キロ、南北千九百キロに及び大小一万三千以上の島嶼からなる。日本の約五倍の広大な国土に、日蓮正宗の寺院は法清寺と妙願寺の二力寺。信徒は、遠隔地にあってもお寺を中心に信心修行に励んでいる。
 今回は、インドネシアの首都ジャカルタにある法清寺に所属して長年信心に励み、組織の幹部でもあるアリム・スディオさんにお話を伺った。
  
●自己紹介をお願いします。
アリム
 出身はカリマンタン島のポンティアナックですが、小さい頃にジャカルタ郊外のタンゲラン市に移住しました。一九八二(昭和五十七)年、親と一緒に入信しました。
 同年代の子供たちと信心活動ができて楽しかったです。信心活動だけでなくスポーツや研修などのプログラムもあり、同じ信仰をする大人とも知り合って一緒に活動できたことも、嬉しい思い出です。

●インドネシアには一九九九(平成十一)年に妙願寺布教所が、二〇〇五年に法清寺が建立されました。それまでお寺はなく、常駐の御僧侶もいらっしゃらない中で、どのように信心を続けてこられたのですか?
アリム
 先達からよく聞かされていたのは、一九六〇年代から始まった信徒組織での信心の輪は、それなりに勢いもあり大勢の方の入信がありましたが、国内の政情や世界の情勢による影響は大きく、法城もなく御僧侶もいない中、安定の見えない焦燥感やもどかしさを抱えていたとのこと。そんな中でも、当時のインドネシア信徒の中心者セノスノト会長は、どこまでも総本山大石寺、日蓮正宗の御僧侶に随順していくんだという信念であったと聞いています。
 一九九三(平成五)年一月にセノスノト会長が亡くなったとき私は、ジャワ島西部の都市バンドンで大学に通っていました。当時は、創価学会問題の大混乱の渦中で、私は、「信心とは何か、仏法でいう真実とは何か」ということを真剣に考えるようになりました。セノスノト会長亡き後の組織の指針は、「総本山に連なる正当な教義に基づかなければ、すべてがおかしくなる。そのために寺院建設が大事」で、このことを常に呼びかけ、総本山へ御指導を仰いでいたと聞いています。
 その後、いくつもの壁に突き当たりましたが、最後は総本山に連なる信心が実を結び、大勢の信徒が結束して前進する中で、一九九九年に念願の妙願寺布教所が開所し、御僧侶の常駐が叶いました。
 現在、妙願寺・法清寺の二力寺で、常に御僧侶より御指導いただくことができます。

●お寺ができるまでの道のりは、けっして平坦ではなかったんですね。
アリム
 二億七千万人の全人口の内、九割近い人がムスリムの国です。その中で人口の一パーセントに満たない仏教徒は肩身が狭く、その上、常駐の御僧侶がいない日蓮正宗は仏教ではないのではないか、と宗教界で非難されていました。そのような中、前御法主日顕上人猊下の御慈悲により、インドネシア担当の御僧侶が任命されました。定期的にご訪問くださり、御授戒や御会式を各地の会館で執り行ってくださって、徐々に地域社会に日蓮正宗が認知され、折伏の輪がさらに広がりました。地域によっては、教線拡大への反発から、焼き打ちや打ち壊しなどの迫害に遭いましたが、それらを乗り越え、現在は全国の百カ所以上の拠点で精進しています。
●コロナ禍、どのように対処しましたか?
アリム
 政府の感染対策でお寺は一時閉門、拠点は一時閉鎖となり、信徒同志の交流が途絶えて活動が止まってしまうかと思われました。しかし、御住職(戸沢良昭御尊師)の「ハンデミックになっても信心活動を止める訳にはいかない」との強いお気持ちから、全国の拠点、個人宅をオンラインで繋いで御法主上人猊下の御指南を拝読したり会合を行い、拠点や自宅で参加できるようにしてくださいました。長期にわたる閉鎖でしたが、今までお寺へ参詣したことのない遠隔地の信徒、行事に参加したことのない方などが毎日のように参加でき、かえって活動者の意識を高め、会合への増員に繋がりました。特に閉門となっていた数ヵ月間は、毎日三時間の唱題に千世帯前後が参加してコロナの収束と活動の再開を祈りました。
 限定的ながらお寺の開門が許されてからは、入場人数の制限に対応して参詣者を事前登録制にしました。登録枠はほぼ毎日埋まり、皆がいかに寺院参詣を求めていたのかが、判りました。
 このハンデミックの間、多くの他宗教は、活動を完全に停止していましたが、私たちは、渇仰恋慕の信心がお寺と個々を繋ぎ、異体同心の絆を実感しました。様々な制限のため限定的でしたが、折伏活動も行っていました。
 本年の新年勤行から三年ぶりに制限がなくなり、その途端に御報恩御講などの行事への参詣がコロナ禍前に近い状態に戻り、皆が喜んでいます。


●コロナ禍が落ち着いてからの活動はいかがですか?
アリム
 ハンデミックで学んだことはたくさんあります。コロナ禍以前にはなかったオンライン配信により、広い国土に点在する拠点が、しっかりとお寺と繋がることが定着しました。このお寺を中心とした活動を、永続させることが大事です。
 反面、オンラインでの会合には限界があります。やはり、人対人、対面による会合が基本であると、大勢の方が理解しています。壮年部、婦人部、青年部もそれぞれ会合を再開し、年内には大規模な研修を行う予定です。
 とりわけ、青年部には折伏を期待しています。この世代は、個人の問題の克服を宗教に求める傾向があります。このため、昔に比べて宗教について自由に話せるようになっていて、御本尊様のことや御題目についてを他人に話すことが難しくありません。様々な困難に直面して、「真実の幸福は、世間で言うところの幸福とは違う」という価値観を持って折伏して欲しいと、いつも励ましています。
 また若い世代は、信心していても、世間の流行や自己表現にとらわれがちです。彼らの話をよく聞いて垣根を取り除き、お寺の活動に積極的に参加できるようになるまで、寄り添うことを心がけています。信心中心の生活を教え、SNS全盛の中で流されることなく、信心に誇りを持って、信心が生活の基盤となるように、確信を深められるように、勇気づけていきます。

●慶祝記念総登山への取り組みを教えてください。
アリム
 本年は、慶祝記念総登山が行われていますので、登山に照準を合わせて準備します。総登山のことは頻繁に話題に上ります。御住職から老若男女全員が参加しようと御指導があり、地方でも機運が高まっていて、中にはその地方だけでグループを組んで御僧侶に引率をお願いして登山するところもあります。経済的にはたいへんですが、それを乗り切って大勢が参加します。三年ぶりに登山できた人はさらなる報恩感謝の念と信心の確信を深めることと思います。私も、本門戒壇の大御本尊様にお目通りさせていただき、家族、親族、近隣の幸福を願い、何よりも折伏実践の決意を固めます。

●今後の展望をお話ください。
アリム
 お寺があり御住職がいて日蓮正宗の行事が行われることが、いかに有り難いことかを、コロナ禍で再認識しました。総本山大石寺に在す大御本尊様を渇仰恋慕し、御法主上人猊下の御指南に連なる信心をさらに深め、僧俗一致して勇躍前進します。まずは本年の慶祝記念総登山の大成功に向けて、御住職の御指導のもと、すべてを唱題と折伏で乗り越えてまいります。