令和5年1月16日付

異体同心して1人ひとりが役割を全う

法華講組織の法統相続を

 台湾・中北部に位置する苗栗県北部に妙徳寺がある。苗栗県は全体の八十パーセントを山地が占めているが、この自然豊かな山々が連なる山中に妙徳寺がある。妙徳寺は、新竹県と苗栗県の二つの地域を管轄し、四千名以上の信徒が在籍している。
 今回は、東竹支部の主任をされている鍾美雪(ゾン・メイイーン)さんに話を伺った。
  
●入信の動機やこれまでの体験などについて教えてください。

 私は、六歳の時に父親を病気で亡くしました。その時は非常に貧しく、市政府や学校から生活保護を受ける家庭でした。母は一人で四人の子供を養わなければならず、土地を借りて畑を耕して野菜を作ったり、工事現場で臨時のアルバイトをしたりして、生計を立てていました。
 また、とても粗末な家に住んでいて、雨の日は、天井から雨漏りがし、床には泥水が溜まります。台風ともなると、家族が二組に分かれて親戚の家に泊めてもらいました。
 母は様々な方法で生活状況を改善しようと試みましたが、なかなか好転せず、やっとの思いで貯めたお金も、騙されて取られてしまいました。当時を振り返ると、私たち家族は、どこに向かっていけばよいのかが判っておらず、頼る場所もありませんでした。
 他人の話に従って爾前教の廟に参拝しましたが状況はさらに悪化し、全く希望が見えない状態でした。
 当時の苦しみを母は、言葉に言い表わせないものだったと言います。
 私は十五歳の時に日蓮正宗の信仰を始めましたが、そのきっかけは、兄のクラスメイトから折伏を受けたことです。その人は、私の母に、「南無妙法蓮華経を唱えれば、苦しい家庭状況を改善したり、大きな病気も治したりすることもできますよ。この御題目には、とても大きな功徳が具わっていますよ」と教えてくれました。
 このお話を聞いた時から、母、兄と私の三人は、まじめに毎日の朝晩の勤行を勤めるようになりました。
 信心を始めたばかりの頃は、信徒の家や、現在、台湾法華講の講頭を務めている林徳晃氏が提供する会場で、皆さんと一緒に日蓮大聖人様の仏法を学ばせていただきました。周りの同志の方々から励ましの言葉をいただきつつ、一年、また一年と信心活動に参加させていただいていました。
 また、この時は周りの方々と共に、一日も早く、御宗門の御指導のもとに信心させていただきたいという大きな目標があり、毎日ご祈念していましたので、生活は充実して希望に満ちていました。私たち竹苗地域の信徒を総本山大石寺の正しい信仰に導いてくれた林講頭には、とても感謝しています。
 こうした歩みを進めてくる中、私が二十歳になった頃から家庭状況は徐々に改善されてきました。
 また林講頚は最初、竹苗地域の信徒約二十数人を連れて静岡県富士市の正光寺へ参詣しました。私もそのうちの一人です。
 御住職様に御授戒を執り行っていただき、御本尊様を御下付戴きました。大きな歓喜に包まれ、御本尊様への信心もより強固になったことを覚えています。翌日は総本山大石寺で、人生で初めての御開扉を受けることができました。この時の感動は、言葉で表現することができないほど大きなものでした。そして台湾に戻ってから一ヶ月が経つと、私たちは最初の家を購入できて、御本尊様を御安置することができました。

●これまでに、支部内の異体同心を図るために、どのような取り組みをしてきたか教えてください。

 私が主任という役職をいただいたのは、二〇一七(平成二十九)年です。それまで全く経験がない役職でしたが、経験のある方が懇切丁寧に教えてくださいました。
 主任となってからの五年間、お寺での法要をはじめ、支部や地区の唱題会、また支部内で新規に入信される方の御授戒式などに参加させていただいています。
 いつも思うことですが、御授戒式は新入信者や紹介者にとって非常に大事な儀式で、必ず役員が付き添うことが大事だと思っています。新入信者は、紹介者や役員の折伏や育成を通して、御本尊様の信仰の偉大さを少しずつ感じることができるようになります。また寺院や支部、地区単位での行事に、私たち役員が積極的に参加することで、周りの人に模範を示せる信心を心がけています。
 一つの支部が異体同心できるかどうかは、主任とその他の役員、講員同士の相互尊重と配慮が大事だと思っています。私は、支部内の役員や講員さんから信頼される主任になれるようにと、いつも自分に言い聞かせています。そのため、お寺や講員同士におけることは、私的な感情を挟まず、御本尊様へのご奉公であると心がけて取り組みます。

●妙徳寺はコロナ禍の影響で、二〇二一年五月より、新御住職が赴任できない状況が続きました。この間、どのようにして信心をしてこられましたか?

 二〇二一年の五月初旬、御住職・浜崎良覚御尊師が新北市の法秀院に赴任されていかれました。ちょうど、台湾で新型コロナウイルスが大流行し入境制限が非常に厳しくなった頃です。このため、新御住職様が台湾においでになれず、講員の間では不安が広がりました。しかし宗務院海外部の御指導のもと、本興院主管・堀田信宣御尊師のご配慮により本興院と法秀院の在勤御僧侶方が、交代で妙徳寺での御法務に当たられていました。
 妙徳寺では、新型コロナの流行が始まった頃から毎月、折伏誓願目標達成と新型コロナの流行が早く収束することをご祈念するための唱題表が講員さんに配られています。唱題表は今も配られていますが、妙徳寺の信徒は、唱題行を基軸として広範な目標を持っているのです。

●最後に今後の決意をお願いいたします。

 私は個人的には、法華講の組織は、リレー走のような要素が大事だと感じています。つまり、縦線と横線の役員がそれぞれに与えられた役目をしっかりと全うすること、また次世代の講員さんに、これまで作り上げてきたものをしっかりと引き継ぐことです。
 私たちの次の世代にとって、よりよい信心環境を作り、より多くの人を折伏して日蓮大聖人様の仏法を信受させていくために、精進することをお誓いします。(現在の妙徳寺には新御住職として石田成実御尊師が赴任されている)