令和2年10月16日付

信行鍛え 一家和楽の信心

渇仰恋慕の信心で登山

 台湾東部に位置する宜蘭県宜蘭市は「好山好水(ハオサンハオスェ)」と言われ、自然に恵まれた地域である。また、土壌が肥沃で農業が盛んである。そうした自然豊かな宜蘭の地に、台湾で四番目に創立された法城・妙照院がある。
 今回は妙照院で、五年前の「第二祖日興上人御生誕七百七十年」の慶祝登山からこれまで、登山部副部長として登山任務に携わって活躍している林家宇(リン・ジャーイー)さんに話を伺った。
 
●信心を始めた頃のことを教えてください。
林 
 私がまだ二十代の大学生だった頃、高校生だった上の弟が突然、病を発症しました。当時の私は、大学に通いながら弟を治療してくれる病院をほうぼう探し回ったり、妹や弟たちの世話をする毎日になり、心身共に疲弊していたときに親友の紹介でこの信心に出合えました。そして家族全員、すがる思いで信心を始めました。
 その頃を思い返すと、今でもとても長かったと感じられるような、私にとって逆境の時でした。この信心に巡り合ったのは、そんな時でした。
 当時はまだ東台布教所(妙照院の前身)もなかったので、時間があると地域の信徒宅で唱題する日々でした。

●登山部の副部長や、登山会中に登山者をサポートする本山任務を務めてきましたね。登山に対する思いを話してください。

 入信から十年余り経った頃、病状があまりよくなかった弟を連れて青年部登山に行ったことをきっかけに、大きな変化がありました。
 登山までは「無事故で登山できますように」と家族で唱題し、登山中には夜通しで弟の面倒を見たりするなど、心身共に休まりませんでしたが、登山から帰ると変化が現われ始めました。いつもは飲みたがらなかった薬を飲むようになり、台北市にある病院に通院しなければならなかったのが、家の近くの病院で済むようになるなど、弟の様子も周囲の環境も、大きく好転したと実感できるようになったのです。
 私自身もこの間に、就職や結婚など人生の転機を迎え、公私どちらも良縁に恵まれました。登山の功徳によって御本尊様から賜った、顕益・冥益の一分なのだと感じました。
 こうした体験を経て、報恩感謝の念を強く持ち登山に関する職務を担当させていただくことができるのだと思っています。

●それでは、登山または本山任務で心がけていることを聞かせてください。

 本山任務は、体力的にも時間的にもたいへんですが、登山に参加する人のため、また自分自身の研鑚のため、任務できる年齢制限までは、参加できるすべての登山で任務に当たることを目標としています。
 登山は、一年に一回は登山することを目標としてきました。多い時で、年に四回登山させていただきました。急な要請を受けて任務した結果ですが、御本尊様から戴いた機会ですから、御報恩の気持ちで登山させていただきました。

●現在は、二人のお子さんも本山任務に就いているそうですね。家庭内での信心について聞かせてください。

 息子も娘も、共に妊娠中からお寺に参詣して御題目を聞かせました。お寺の少年部の活動や太鼓練習などにも進んで参加し、子供の頃から健やかに信心を育んでいただくことができ、今では二人共、大学生です。
 子供のうちは、登山に連れていくとなれば、おむつやミルクなど荷物が多くて何かとたいへんです。夜泣きして寝付かなければ、唱題しながら寝かしつけました。これを苦労と思う方もあるかも知れませんが、私の場合は病の弟を登山に連れていった経験があったため、やり遂げることができました。
 昨年の海外信徒夏期研修会の登山では、子供たちも駆け出しの本山任務者として任務に当たりました。任務を通して登山の時の礼節や精神について彼らなりに考え、学んでいる姿を見て嬉しく思います。これからもがんばって欲しいと願っています。

●現在のコロナ禍にあって、取り組んでいることがあれば、教えてください。

 コロナ禍による渡航制限があるため、現在は登山が叶いません。そのため、登山に関する一切の取り組みが停止しています。
 しかし先日、宗務院海外部による特別のお取り計らいで、私たちはインターネットを通して総本山にいらっしゃる漆畑海外部長様より、オンラインで御指導と激励をいただきました。画面越しではありましたが、まるで登山できたようで、たいへん嬉しかったです。
 他にも、インターネットによって常日頃から、総本山の写真や動画等を拝見できるので、それを見ては総本山への思いを馳せ、登山した日のことを回顧し、大改修を終えた三門を拝せる日を心待ちにしています。
 また、台湾でも九月七日から百日間唱題行が始まっています。
「一切を開く鍵は唱題行にある」(大日蓮 六三五号)
との前御法主日顕上人の御指南を拝し、必ず一時間はお寺で唱題して、再び登山できる日がくることを御祈念しています。

●最後に、来年に向けての抱負等をお聞かせください。

 弟の病をきっかけに、私は信心に出合えました。その弟も現在では母と一緒に毎日勤行・唱題に励んでいます。共に苦労を乗り越えてきた妹や下の弟もそれぞれ家庭を築いて、一家和楽の信心をしています。
 入信からこれまでを振り返ると、信心している中で生じる困難は、退転することなく御本尊様を信じて御題目を唱えていけば、必ず解決への道が開けると、私は確信しています。
 間もなく宗祖日蓮大聖人御聖誕八百年の大佳節の年を迎えますが、私自身、新たな目標を掲げて、来年以降もさらなる信心の向上に努めていきたいと思っています。