令和2年7月16日付

願うは御本尊様へのご奉公と皆の信心向上

すべての経験が成長の糧に

 台湾の政治、経済文化の中心である台北市に、一九九六(平成八)年十二月、海外ではアジア初の本格的な法城として本興院が開設され、翌年、総本山第六十七世日顕上人の御親修を賜って落慶入仏法要が奉修された。さらに明くる年には法華講が結成され、台湾における広布は幕を明けた。
 今回の游智光(ヨウ・ズークァン)さんは、本興院所属の北南本部の副幹事を務める気鋭の壮年である。
 
●入信の動機と経緯を教えてください。

 一九七五(昭和五十)年、叔父が病気で倒れたときに、叔母が友人から御題目を教わり、程なく全快しました。我が家の入信はこれが機縁です。私は、物心がついた頃から御題目を唱えていました。ただし、御授戒は二十五歳の時で一九九一(平成三)年、本興院の前身である台北事務所で受けました。今年七十八歳になる叔父は、今も元気に法秀院の幹事を務めています。

●游さんはご家族で活動されていますね。法統相続の大切さをお話ください。

 入信当初から我が家は一家和楽の信心で、両親と共に素直に信心してきました。
 特に母は実直で、字が読めないにもかかわらず、御本尊様への確信は生涯揺らぎませんでした。母は唱題するたびに、家族の安全と健康を感謝していました。その姿に倣い、今私は夕の勤行の時、御本尊様に家族全員の御加護を感謝申し上げています。
 その母は二〇一七年、八十歳で亡くなりました。葬儀の日、安らかな母の顔を見て、成仏を深く確信したものです。
 私には娘が一人います。我が子を信心に導き、絶対の幸福を確立することが、親としての使命だと思います。「後悔先に立たず」と、真剣に法統相続に取り組んでいます。

●長年、役員を担ってこられた体験をお話ください。

 一九九五年、当時の常駐御僧侶が、青年部設立を呼びかけられたとき、志願して準備委員となりました。以来二十五年、御本尊様へのご奉公を忘れたことはありません。
 法華講が結成してからは、支部主任や教学試験の準備委員長も担当しました。支部主任を退いた後に、少年部の担当員をしたこともあります。すべての経験が信心の成長の糧となっています。
 どんな役職も広布前進のお手伝いだと自覚し、信徒の立場に立って力を尽くすことが大切だと思います。活動を企画するときは、御本尊様にお喜びいただけるように、参加者にとって信心向上の力となるようにと御祈念しています。私の活動の原動力は、報恩感謝です。それによって御本尊様の功徳も次々と感じることができます。
 広布の活動は、マラソンのような感覚です。信心を充実させて、常に心身の状態を整えることによって、安定した力強い足取りでゴールに向かって進んでいくことができると感じています。

●印象に残っている折伏体験を教えてください。

 ある日、病院で診察を待っていたとき、後ろに座った念仏の尼僧と思しき者が、隣の人に南無阿弥陀仏と西方極楽世界を説教していました。私は、しばらく聞き耳を立てていましたが、破折の心を抑えることができず、その話題に加わって尼僧に問いました。「南無妙法蓮華経を聞いたことがありますか? 阿弥陀仏は架空の仏です。末法の現代では力のない教えですよ」と説明し、破折しました。
 私が南無妙法蓮華経を口にした途端、相手は緊張した顔つきになり、何かを呟きました。お経を唱えていたようです。すると、このやり取りを聞いていた周りの人が不思議そうに「それはどんな仏法ですか」と私に聞いてきました。
 この経験から、謗法を破折するとき、邪法は正法には勝てないことを改めて確信しました。尼僧の動揺した様子が、今も印象に残っています。

●新型コロナウイルスの状況下、どのような姿勢で信心に取り組んでいますか?

 新型コロナウイルスは世界を混乱させています。台湾も例外ではありませんが、幸い台湾は、政府による早期の防疫措置により、ほとんど通常通りの生活を送ることができています。
 本興院も宗務院海外部の御指導と台湾・内政部の指示に従って適切に運営され、法華講の活動が、規模の縮小はあっても中断されることはありません。
 私自身もこの疫病が発生してからは、いつもより唱題に力が入っています。困難や壁にぶつかったとき、
「冬は必ず春となる」(御書 八三二n)
という御金言がいつも頭に浮かびます。例えば体内にウイルスが侵入したら白血球が立ち上がって撃つように、困難に遭ったときこそ、信心を奮い起こすときだと思います。

●来年は御聖誕八百年の大佳節です。台湾広布への展望をお聞かせください。

 本興院が建立されたとき四千人ほどだった信徒が、今では台湾全体で約五万六千人になりました。過去二十三年間の台湾広布の飛躍的な発展は、ひとえに僧俗和合による努力の賜物です。
 しかし、最近は慣れもあってか、少々弛みがあるように見受けられます。これからは、信徒の求道心と信心の喜びを引き起こして強めていくことが喫緊の課題です。
 明年の御聖誕八百年の大佳節を契機として、台湾法華講員一人ひとりの信心と育成の根をさらに深めて、新たな段階へ向かって広布の体勢の再構築が、今後の発展の鍵を握っていると思います。