平成30年10月16日付

移住して五十年 カナダ広布へ着実に

寺院参詣の喜び 正法受持の賜
 カナダ初の寺院である妙正寺は、昨年五周年を迎えたばかりの若いお寺と法華講である。お寺が出来るまでは、カナダを東西に分けアメリカの二つの寺院が管轄していた。
 西側にあるバンクーバー地域の日蓮正宗信徒は千五百キロ以上も離れたアメリカ・サンフランシスコの妙信寺に所属して、日頃の信行には多くの時間と労力が伴っていた。そんなバンクーバー法華講員の歴史と苦労を知る第一人者で、早くに日本から移住し、信行に努めてきた妙正寺法華講員の母〃とも呼べる存在が、今回お話を伺う後藤隆子さんである。
●自己紹介を兼ねて入信の経緯を教えてください。
後藤
 美しい自然に恵まれたブリティッシュコロンビア州最大の都市バンクーバーには、一九六九(昭和四十四)年三月にカナダ広布を夢見て移住し、今年でちょうど五十年目となります。
 私は一九三六(昭和十一)年二月に東京都荒川区に生まれ、一九五五年九月に幸せになれると信じて品川の妙光寺で御授戒を受けました。
 当時は創価学会員として信心に励み、二カ月後の十一月には初めて総本山大石寺に登山させていただきました。その頃は、本門戒壇の大御本尊様は御宝蔵に御奉安されていて、総本山第六十四世日昇上人の大導師のもとでお目通りが叶いました。その時の御法主上人猊下の尊い御姿や、一人ひとりが口に樒をくわえて御宝蔵に入った感激は、今でも思い出されます。
●妙正寺が出来るまでの間、どのようにして信心修行を続けてこられたんですか。
後藤
 はい、ご存知の通りバンクーバーに妙正寺が出来たのは六年前です。それ以前、最初はロサンゼルスの妙法寺に所属させていただきました。その頃はサンフランシスコにはお寺がありませんでしたから。お寺をお護りしなくてはと、御供養、塔婆供養に励みました。
 その後、創価学会問題が起こり、誰を信じてよいのか判らなくなって脱会したものの、一方では御宗門が学会の反省懺悔と再び過ちを犯さないと誓う姿勢を受け入れられ、御慈悲の上から善導された時期に、お寺からも遠ざかる結果となりました。
 しかし、一九九一(平成三)年十一月に御宗門より創価学会が破門されることを聞いた私は、直ちに日蓮正宗の信徒として受け入れていただけるよう宗務院海外部とご相談をし、晴れて法華講員として登山させていただくことができました。この時、一緒に登山したメンバー九人と共に、前御法主日顕上人猊下への御目通りも叶いました。
 その頃にはサンフランシスコに妙信寺が建立されていて、私もそこに所属させていただくことになりました。バンクーバーから妙信寺までは約千五百キロの距離があり、お寺へは年に二、三回参詣できればよいほうでした。何人かで車に同乗して行くのですが、途中で一泊し、二日目の夕方に到着、翌日の法要や会合に参加し、その後すぐにまた一日かけてバンクーバーに戻るという感じでした。
 また、バンクーバーでは個人宅で会合・ミーティングを行っていましたが、あちこちのお宅を転々として行っていました。だんだんに人数が増えてきた頃、ある信徒のご好意で、オフィスとして利用している部屋を貸していただき、座談会や唱題行などを行っておりました。
 その後、二〇〇八年に布教所が開所されました。そして二〇一二年に、現在の妙正寺へと、寺院に昇格しました。長年の念願だったお寺がようやく出来て、たいへん嬉しい限りです。
 ●後藤さんは学会時代からの知り合いにも折伏を続け、見事に成就されているそうですね。
後藤
 はい。ある日、学会を抜けてから一年以上もお寺に所属していなかったEさんのことを、たまたま学会員時代の知り合いから聞きまして、その日のうちに彼女に連絡を取り、すぐに会うことができました。Eさんは今まで何十年も信心していながら御会式に参詣したことがなかったので、ぜひお寺に行きたいということでした。その後、日本に一時帰国した彼女は、日蓮正宗信徒だった病床のお姉さんに会い、次の日にお姉さんが亡くなると、その成仏の相を見て、これこそ正しい信心だと確信し、そのまま日本のお寺で勧誡を受けて、バンクーバーに戻ってきました。

●古くからの知り合いと再び一緒に信心ができるのは、すばらしいことですね。最後に、今後の抱負を聞かせてください。
後藤
 今、妙正寺の信徒として活動できることに感謝し、今日まで六十三年間、信心を続けてきて本当によかったと思っています。健康や経済状況にも恵まれ、夫婦仲よく暮らしていられることに、御本尊様の功徳を深く感じ、感謝の毎日です。
 今まで信心を持続できた体験を通して、これからも多くの人たちに日蓮正宗の信心を話していきたいと思います。
「我並びに我が弟子、諸難ありとも疑ふ心なくば、自然に仏界にいたるべし」(御書 五七四n)
との御金言を胸に、まず第一に御本尊様への御報恩謝徳、第二に平成三十三年・宗祖日蓮大聖人御聖誕八百年、法華講員八十万人体勢構築に向けて、折伏成就と登山を毎日御祈念してまいります。