平成29年10月16日付

亡き息子を思い、家族でせい一杯ご奉公
妙法広布の一族めざす
 台北市は台湾最大の都市であり、台湾の経済、政治、文化の中心地である。そこに本年五月に創立二十周年を迎えた本興院がある。
 今回は、台湾法華講の折伏部長をされている簡鼎軒さんに話を伺った。
●入信の動機と経緯を教えてください。

 民間信仰をしている家庭で生まれ育った私は、小さい頃、母親が神様に生贅を捧げるたびに、これで本当に幸せになれるのかと疑いました。
 また社会人になって知り合った他宗信仰の同僚は、「○○大師はこう言いました」とか「仏法では〇〇〇と説かれています」と口癖のように言っていながら、それとは裏腹に無責任極まりない人でした。このような姿を見て、宗教や信仰には強い抵抗を感じていました。
 その職場で知り合った主人は日蓮正宗の信徒であると教えてくれ、その時初めて「南無妙法蓮華経」を聞きました。過去の体験によって、私にとってそれは結婚の大きな障害となりました。
 しかし、私の宗教観を尊重するという条件で結婚が決まり、一九九四(平成六)年三月、当時の弘法会事務所(台北事務所)で、日蓮正宗の御僧侶の導師により、結婚式を挙げたのです。台湾法華講で最初の結婚式でした。
 結婚して七年後のある日、ペットの美容室でシャンプーを受けていた飼い犬が突然、死んでしまったのです。悲しさのあまり、愛犬のために塔婆を建てたいと思って、御授戒を受けました。

●台湾広布二十年の躍進の中で、簡さんは夫婦共々第一線で活動してこられたと思います。特に心がけていることは何ですか。

 やはり御本尊様への報恩感謝の気持ちです。入信以来、御本尊様から功徳や利益を戴いてきました。ご奉公の誠を尽くしてその御恩に報いたいと思うからです。
 折伏部長の役に就くよう打診があった際、主人は、ご奉公に関することは一切断らず、持てる力で精いっぱい尽くせばいいと言ってくれました。非力な私を登用してくださった御主管・石橋頂道御尊師の期待にお応えするために、精いっぱい努力すると決意しました。そして、台湾法華講の草創期の先輩たちの求道と護法の精神を学び、それを未来に伝えていきたいと思っています。



●六年前、たいへんな逆境に遭遇されましたが、どのようにしてそれを克服されましたか。

 六年前のある朝、一本の電話がありました。息子が倒れて救急車で病院に運ばれるというのです。病院に着くと、病床には意識のない息子の姿がありました。耳元で必死に名前を呼び、ひたすら唱題しました。
 精密検査の結果は、先天的な脳の血管の障害でした。「治療を続けても植物人間になるだけ」と、応急処置も止めるよう勧告されました。青天の霹靂の出来事に茫然自失し、心の整理もつかないまま涙さえ出ませんでした。しかし御主管からは、諦めず治療を受けるよう御指導があり、集中治療室で治療に専念しましたが、四十五日後、最愛の息子は家族のもとから旅立っていきました。
 息子の誕生から十年の歳月は夢のようでした。初めての登山の時に本門戒壇の大御本尊様への御内拝を賜った功徳で授かった福子でした。まさかそれから十年後、その遺骨を抱いてご登山し、総本山に納めることになろうとは、思いもよりませんでした。
 しばらく悲しく苦しい時期が続き、いつでも御本尊様に唱題して、苦しみを克服する智慧と勇気を戴けるように祈り続けました。息子を成仏させたい一心で、塔婆を建てて回向しました。これまでの人生で一番辛い時期でした。
 その間、絶えず指導し慰安し協力してくださった御主管をはじめ、蘭室の友に心から感謝しています。総本山に遺骨を納めた時に、納骨壇まで来て激励してくださった漆畑海外部長様にも心から感謝しています。数え切れないほどの真心の激励やたくさんの支援が、我が家の再出発の原動力となりました。
 息子が亡くなる前、私たち夫婦は、医師から治療拒否同意書の署名を求められていました。治療を止めないと、息子の手足は黒くなり、やがて症状は体にまで及んで判別できないほど腫れ上がるという説明でした。それでも治療を続けてもらったわけですが、驚いたことに息子の体はきれいに保たれていました。御本尊様からこのようなすばらしい現証を戴き、深く感謝しました。

●本年の本興院創立二十周年を経て、いよいよ明年台湾法華講成立二十年の大きな節目を迎えます。どのような気持ちで迎えられますか。

 入信してからの十八年は、家族や兄弟を折伏することの難しさを嫌というほど思い知らされました。今の一番の願いは、台湾法華講成立二十周年の大佳節までに、一族を折伏して妙法に帰依させ、妙法広布の家族になることです。
 亡くなった息子の姉は今年、日本の大学を卒業し、今後は通訳として全力を尽くしていってくれるでしょう。今後共、家族全員で明るく元気な姿で御本尊様にご奉公してまいります。

●宗祖日蓮大聖大郷聖誕八百年の大佳節に向かって、抱負をお聞かせください。

一番大切なのは、毎年、台湾法華講の折伏誓願目標を確実に達成することです。そして二〇二一(平成三十三)年・宗祖日蓮大聖人御聖誕八百年の大佳節の御命題を必ず成就するために、折伏に全力で励む所存です。