平成29年3月16日付

UK(英国〕在住の法華講員は、数の上ではまだこれからであるが、御法主日如上人猊下の御指南のままに、異体同心の信心を強く持ち、UKのみならず全ヨーロッパ広布をめざし日々精進している。
 今回は、UK法華講員の代表を務めるジェームス・フォードさんにお話を伺った。
●初めに簡単な自己紹介をお頗いします。
ジェームス
 私は西ロンドンに在住し、ロンドン市内にある大学で教師及び研究員として働いています。初めて日蓮正宗に出合ったのは二十代で、約三十年前になります。

●日蓮正宗の信仰に出合った経緯を教えてください。
ジェームス
 私は特に信仰ということに興味がなく、育った家庭環境もそれほど敬虔なキリスト教徒というわけではありません。ましてや東洋の宗教や、仏教に興味があったわけでもありませんでしたが、心のどこかで「身の周りで起こることにはすべて何らかの意味があり、その答えは精神世界にあるのではないか」とは思っていましたので、同僚の女性から初めて日蓮正宗の話を聞いたとき、素直にその話に耳を傾けることができました。
 当時、私は調査員としてテレビ局で働いていて、同僚はドキュメンタリー映画の製作をしていました。ある日、仕事を終えた後の食事の席で、彼女は少しずつ信心の話をし始めました。その後もたびたびお茶や食事を共にしたときに信仰の説明や体験を聞き、自分でも手に入る限りの本を読んだり、調べたりするようになりました。しかし入信を勧められて、はたと立ち止まってしまいました。入信して信心を始めるほどには心の準備ができていなかったのです。よく知りもしないことに性急に飛び込んでいくことが、じっくり考えて行動するタイプの自分にとっては常軌を逸したことにすら思えたのです。
 しかし、その頃は家族の間で問題が起こってたいへん悩み、心を痛めていました。問題を解決したい、それができなければ、せめて問題と向き合える力が欲しいと思いました。これが発心のきっかけでした。「私の置かれている状況が変わるものならば、御本尊様に御題目を唱えさせて欲しい」と言って同僚を訪ねました。
 今でもよく覚えています。初夏の朝、カーペットに正座して、初めて御本尊様に「南無妙法蓮華経と御題目を唱えました。その時、私の中の深い場所にある何かが変わったと思いました。唱題が終わると心は軽く、気持ちも新たになっていたのです。でも、時間が経つにつれてだんだん薄れていったので、あの心の状態を保っていくためにはもっと御題目を唱えなくてはいけないと気がつき、さらに唱題するようになりました。
 すると間もなく、家族と話し合えて、思ったよりずっと早く問題を解決できたのです。
 この信心に巡り合え、わずかながらでも成長し、自分と自分の周りを変えることができたという貴重な体験ができました。問題が解決できただけでなく、この問題のお陰で、私は物事を前向きに考えられるようになっていたのです。そして六カ月後の一九八八(昭和六十三)年の冬に、日蓮正宗の御僧侶が日本からロンドンに訪問された際に御授戒を受けることができました。



●登山の体験についてお話いただけますか。
ジェームス
 信心を始めてから十年間は、生活がたいへんだったこともあって一度も登山をしたことがありませんでした。
 入信後、私は折伏してくれた同僚と結婚しました。一年ほど経って息子が生まれました。毛布にくるまった生まれたばかりの息子を御本尊様の前の床に寝かせて、家族揃って勤行したときのことを今でもよく覚えています。本当に嬉しく幸せに思いました。
 しかしその数年後、妻は乳ガンと診断されました。手術は成功しましたが、発見が遅かったため転移していて、抗ガン剤治療と放射線治療を受けることになりました。できるだけ一緒に過ごせるよう、私はメディア調査員として独立し、家で仕事するようにしました。まだ若く収入も不安定で、妻は勤めることができなくなっていたので、金銭的にも苦しい状態でした。家族揃って登山することは夢のまた夢でしたが、私たちは諦めずにいました。
 妻は御本尊様の功徳を戴いて、ガンが進行していたにもかかわらず七年間延命いただき、病院で安らかに息を引き取りました。ちょうど海外部UK担当の佐藤道幸御尊師がスペインの妙昌寺にいらしていて、妻のことを聞き、葬儀のために急遽ロンドンまで飛んできてくださいました。それまでU.Kで日蓮正宗の葬儀は行われたことがなく、私はたいへん光栄に思いました。
 葬儀の後、御尊師は「本日のお葬儀は偶然ではなく、あなたと奥さんの強盛な信心によって私が呼ばれてきたのですよ」とおっしゃってくださいました。御尊師に、妻が生前、大石寺に自分の遺灰を収めて欲しいと願っていたと申し上げると、その年の御大会に登山するよう御指導くださり、納骨の手続きをしてくださることになりました。
 数力月後、空港で遺灰と共に日本に向けて出発する飛行機への搭乗を待っていたとき、突然に、「一緒に登山しよう」と妻と約束したときのことが思い出されました。私は驚きました。一緒の登山はもう叶わないと思っていたのに、このような形でも一緒に登山できるという現実にたいへん衝撃を受けました。
 この登山は生涯、私の心の中で生き続けます。妻を亡くし、深く悲しんでいたのは事実ですし、その悲しみを簡単に拭い去ることはできません。ですが、厳粛な御開扉を受け、丑寅勤行に参加させていただいて、私は深く感動しました。亡き妻に別れを告げるのに、これ以上ふさわしい場所はなかったと思います。今まで以上に信心を深めることができ、これから先、幸せな気持ちを取り戻していくことが必ずできると確信して下山しました。
 その後、経済状態もよくなり毎年登山できるようになりました。あれから何度も登山させていただいて、そのたびにこれ以上の登山はもうないだろうと思っても、次の登山でも同じようにすばらしさを感じるのです。どの登山でも信心を深めさせていただき、世界各国から登山されている方々と親交を結び、すばらしいサポートスタッフの方々と巡り合い、生命力をいただいて自らの成長を感じながら帰国します。もちろん、あの初めての登山を忘れることはありません。

●日々の信仰活動と今後の目標をお話ください。
ジェームス
 今私は、UK.法華講員の代表をさせていただいています。講員の半数はロンドン地域に在住し、残りの半数はUK全土を三地域に分けたグループに所属しています。毎月各グループで、唱題会と海外部から送られてくるテキストをもとにした御書の勉強会を行い、友人や家族にこの仏法を伝える方法を模索しながら、講員同士力を合わせ、会合以外でも集まれるよう励まし合っています。
 まだお寺が建立されておらず常駐の御住職様がいらっしゃらない状況ですが、年間四回、スペイン妙昌寺御住職の在間良妙御尊師がいらしてくださるお陰で、本年二月現在、折伏誓願目標達成に向かって順調に前進できています。道のりは遠いかも知れませんが、UKの全講員が、寺院の建立を心の底から望んでいます。まずは在間御尊師をお招きできるセンターを設け、その経験を土台に寺院建立をめざしたいと思います。一日も早くセンター開設を実現できるよう、皆で激励し合いながら前進します。
 そして一番重要なことは、UK法華講員の間に広宣流布に向かっての勢いと力が培われることであり、この国の人々に大聖人様の仏法を弘めていくため、新入信者共々、力強い講中を築いていくことです。センターの設立と力強い講中、これを達成できれば、すべてのことが達成されていくと堅く信じています。