平成28年2月16日付

 タイは、国民の九十五パーセントが仏教徒である。国王も仏教徒でなければその地位に就くことができない。
 このような国土世間にあって、本門戒壇の大御本尊様を信仰の根本として、日蓮正宗の寺院建立と、御僧侶の常駐を願い、正法広布・御命題達成をめざして精進を重ねている。
 そのような中、タイ北部のチェンライ県では、昭利六十年代に日本より移住した故・松井清太郎氏が中心となって地域の折伏が進んだ。
 今回は、松井氏の夫人で、長年ご主人を支えて共に信行に励んできた、カンラヤ・マツイさんに話を伺った。
●日蓮正宗の信仰に出会った経緯をお話いただけますか。
カンラヤ
 亡くなった主人、松井清太郎に出会って折伏を受ける以前は、キリスト教徒でした。
 松井は早くに両親を亡くしたため、家長として独身のまま弟や妹を長年支えてきましたが、弟や妹が成人した後タイに渡ってきて、地方のチェンライにもしばしば訪れていました。不思議な縁によって、当時美容師をしていた私はそこで出会い、折伏を受けました。
 当時、体調不良が続いていた私は「キリスト教では宿業を乗り越えていくことはできない」と言われ、入信を決意いたしました。

●入信によって、どのような変化があったかを聞かせて下さい。
カンラヤ
 一九八七(昭和六十二)年に松井と結婚した後、「あなたの悪業はとても重いように思う。ぜひとも総本山に登山させていただき、本門戒壇の大御本尊様にお目通りして、罪障消滅を願っていくべきだ」と言われ、一九九三(平成五)年に初めての登山をさせていただきました。
 初めて受けた御開扉の最中、大御本尊様に、健康になって働くことができるよう、また折伏の活動に参加させていただけるよう、御祈念いたしました。その後、体調がよくなった私は、主人と共に信心活動に励めるようになりました。本当に有り難いことだと、御本尊様に感謝しています。
 その後も、これまでに何度か大病を患いました。中でも辛かったのは、眼を患い視力を失いかけたことです。この時は、毎日真剣に三時間の唱題を重ね、ひたすら御本尊様に御祈念いたしました。
 その結果、医者が驚いて「何か特別な薬を服用しているのでは?」と、疑うほど快復し、無事に乗り越えることができました。病弱だった私が、今日、健康に過ごせるのは、この仏法に巡り合い御本尊様と縁することができたお陰です。
 また、私には息子と娘が一人ずついますが、経済的に恵まれない人が多くいるこの国で、二人共自立して生活ができていることも、付け加えさせていただきたいと思います。南無妙法蓮華経の教えに出合い、正しい仏法を学ぶことができる幸せは、言葉では表すことができません。

●常駐する御僧侶がいない中、どのようにして信行を錬磨していますか?
カンラヤ
 私たちが住んでいるチェンライには、現在、中心的な役割を果たしている家庭が七世帯あります。 
 毎月第一日曜日の広布唱題会はマツイ家に集まります。さらに他の六世帯の家において、交代で座談会などを開くことで、チェンライに住む信徒が一人でも多く会合に参加できるようにしています。
 育成の際に特に心がけているのは、純粋な信仰を持つことです。タイでも特に土着の信仰や小乗仏教が盛んな地方ですので、多くの信徒に謗法厳誡ということを常に伝えていくよう、努めています。
 具体的には、「この仏法の修行を、他の教えの信仰と混ぜてはいけませんよ」「謗法を犯してはいけませんよ」「宿業を変えていきたければ、真剣に唱題しましょう。そうすれば、必ず結果が出ます」などと、激励・育成をふだんから欠かしません。そして御僧侶が訪問されるときには、信徒に個別に話していただき、謗法払いを確実に実行できるように運びます。



●信心をしていく上での苦労はどういったことがありますか?
カンラヤ
 どこの国・地域でも同じだと思いますが、やはり折伏を実践していくということ、またその後に育成をきちんとしていくことは、私たちの地域でも重要な課題です。
「末法の衆生にとって大切な教えは南無妙法蓮華経である」ということを自分自身がしっかりと心に刻み、他にも伝えていくことを第一に、家庭訪問を積極的に実行して入信者の育成に努めています。
 また、私たちにとって日本製の仏壇を入手することは簡単ではありません。幸いなことに、最近活動に積極的に参加している中に、大工で電気関係にも通じている方がいます。この方が木材を加工して線香入れや仏壇をみんなのために作ってくれています。
 また、山岳民族の暮らす集落では、家の中まで隙間風が吹くため、地元で手に入る蝋燭ですと、すぐに消えてしまいます。そこで、やはりこの方が電気蝋燭をこしらえてくれたので、その集落の信徒もたいへん助かっています。
 このように、物心両面で工夫を重ねています。

●最後に二〇二一(平成三十三)年・宗祖日蓮大聖人御聖誕八百年に向けての決意をお聞かせ下さい。
カンラヤ
 法華講員八十万人体制構築に向かって、真剣に御祈念していくことはもちろんですが、今後さらに重要になるのは育成であると感じています。
 正法を信じる人がまだまだ少ないこの地域で、メンバーが簡単に紛動されて御本尊様への正しい信心を失うことがないよう、ふだんから互いに正しい信行学に努めます。御僧侶が訪問くださるときは、教導に触れられる絶好の機会ですから、集まってくるよう呼びかけ、機会を逃がさないようにしています。