平成20年10月16日付

まずはロンドンの御僧侶常駐をめざす
他人から信頼される人格に
 今回は、多様な民族や人種が共存している多文化主義のU.K(英国)において、昨年より英国信徒代表を務められている、フィンランド出身のユーシ・トゥルーネンさんにお話を伺った。
●まず、自己紹介をしてください。
トゥルーネン
 私はイギリス・ロンドンに住む、ユーシ・トゥルーネンと申します。現在イギリス法華講の信徒代表を務めています。生まれはフィンランドです
が、人生のほとんどをイギリスで過ごしています。

●どのような経緯や動機で入居されましたか。
トゥルーネン
 入居して今年で二十一年になります。それまでも宗教に興味はありましたが、信じるまでには至りませんでした。
 最初に日蓮正宗のことを耳にしたのはメディアを通じてでした。当時、新聞にも雑誌にも多くの記事が掲載されており、その中のある日刊紙の記事に関心を持ちました。そして、詳しい内容を知りたいと思い、手紙をNSDUK(現SGIUK=英国の創価学会組織)宛に書きました。返事は、とても興味深いものでしたが、同時に警戒心を抱かせるものでした。なぜならば池田大作を宣揚する記述ばかりで、ややもするとカルトのように感じられたからです。その後は新聞などの記事を読むこともありませんでした。
 しかし、この時を境にいろいろなところで日蓮正宗に触れる機会があり、その度に、信心の種が植えられたのだと思います。そして、これには何か意味があるのではないかと思うようになり、最後に日蓮正宗のことを話してくださった方に、信心を始める用意ができましたと伝えました。
 早速その方は私の家を訪れ、お数珠とお経本をくださり、その場で勤行を教えてくれました。数日後、私はその方の家を訪れ、初めて御本尊様を拝することができました。この時、心が安らかになり、我が家に帰ったような穏やかな気持ちになれました。それ以来、一度も勤行を欠かした日はありません。
 学会問題が起きる数年前からSGIに対する不安は募っていましたが、日蓮正宗の信心はとてもすばらしいと感じていたので、御本尊様から離れることはありませんでした。学会問題が起きたときは、それまでのSGIとの関わりから、非常に困難な時期でした。しかし、日蓮正宗への繋がりと御授戒をしてくださった御僧侶に対する深い思いがあり、また、幸いなことにイギリスの法華講員と連絡を取ることができました。そして前御法主日顕上人猊下の御指南を拝読したとき、即座に日蓮正宗の正しさが判り、脱会しました。

●法華講員となってからの活動について聞かせてください。
トゥルーネン
 SGIを去り法華講に入ったことは、まるで、暗闇から明るい太陽の光の下へ歩み出たようでした。立派な法華講員になろうと、僧俗和合した法華講組織のお役に立てるように、力の限り挑戦してきました。法華講員のための隔月誌の作成や勉強会のお手伝いなどもさせていただき、できるだけご登山するよう努めています。
 二〇〇七年に、信徒代表の任を、とのお話がありましたが、代表としてふさわしいかどうか自信がなく、悩んだ末に、みんなに投票で決めてもらいました。
 私たちの組織は規模も小さく、運営する上で様々な苦労がありますが、私が心がけていることは、班長さんと一緒になって、信徒一人ひとりに、御僧侶からの指導や情報が行き届くように、パイプ役となることです。私たちも徐々にではありますが、真の異体同心というものを理解し始めました。それを実践することによって、寺院建立・御僧侶常駐の大きな夢も叶えることができるのです。

●どのようにして信心修行を持続していますか。
トゥルーネン
 それはとても単純明快です。勤行・唱題をしていれば自然とそうなります。生きていくために呼吸や食事が必要であるように、何があっても毎日欠かさず勤行しなければならないと思うのです。信心抜きの人生なんて考えられません。挫けそうになっても、御本尊様の御前に座るだけで新たな希望を感じられます。

●折伏するときに心がけていることはありますか。
トゥルーネン
 信心していると素直な心になれます。そうすると他人の境界がとてもよく理解できるようになります。相手を理解すれば、仏法の話をすることはそんなに難しいことではありません。
 折伏は、ある人には単刀直入に、またある人には言葉を選び繊細かつ慎重に話していかなければいけません。いつも冷静でいることも大切です。私たちは、その振る舞いで他から判断されます。もし挑戦的であったり攻撃的な振る舞いをしようものなら、この教えを誤ってとらえられてしまうでしょう。私はいつも、私たちは大聖人様の「お使い」であると心がけると共に、自身の体験を他人と分かち合います。ちょうど今日、「業」と「十界」について、二人の人に話ができました。二人共、この信心でなぜ境界を変えることができるのかまでは理解できたと思います。
●UKで折伏する上で難しいことは何ですか。
トゥルーネン
 イギリス人に仏教はあまり理解されていません。仏教で説かれる知識的な発想は好きと言う人でも、実際に信仰するとなると敬遠し、尻込みします。また若い人は、真実の幸せを追求するより、遊びや金儲け、友達と楽しむことを大事にしているように見えます。そのような人は信心の話を聞いたとき、断る理由として「時間がないから」と言います。驚くことに、自分は信仰しないで、「私のために祈ってね」と言う人もいます。幸せにはなりたいが、修行はできないと思うようです。
 また、イギリスにお寺がないため、私たちが宗教活動していることを真剣に理解してもらえない面もあります。信徒の自宅で会合を持つことにも違和感を感じるようです。寺院が建立されれば、容易に説明もできると思います。もちろんそのためには折伏を進めていかなければなりません。難しいところですが、お寺がないことを言い訳にしないで、折伏に励んでいます。

●入信後の功徳の体験を教えてください。
トゥルーネン
一番の思い出は、初めて本門戒壇の大御本尊様に御目通りできたときです。言葉では表し切れないほどのものを感じました。知人宅で初めて御本尊様を拝したとき以上に、本当の家に帰れたような感じがいたしました。
 信心を通じて多くの功徳を戴きました。時には些細なことだったり、時にはとても大切なものもありました。母と妹と一緒に勤行したときは、とても特別なことだったと思い出されます。
 最近のことでは昨年、私は関節リウマチが悪化し、ついには歩けなくなってしまいました。体の痛みに耐え、病院のベッドで二カ月間、ひたすら御題目を唱えました。指を真っすぐに伸ばせないので、お数珠もきちんとかけられない状態でしたが、何とか勤行・唱題を続けました。貧血がひどく、体重も四十九キロまで落ち、一日二回の輸血をしなければいけないほどでした。しかし、仏様の御慈悲に守られているとの確信を持ち、その結果、今こうして歩けるようにもなり、仕事にも復帰が叶いました。
 御本尊様からの最も大きな功徳は、内面的な変化です。入信当初私は自己中心的で他人からの信頼もありませんでしたが、この点が大きく変わったところだと思います。まだ多少利己的で恥ずかしがり屋で内向的かもしれませんが、御本尊様を信じていけば、どのようなことにでも立ち向かっていけると思います。

●今後の決意を聞かせてください。
トゥルーネン
 私の決意は、イギリスのメンバー皆が知っているように、布教所あるいは寺院をこのロンドンに建立することです。それは信徒のためのみならず、国内外で起こっている戦争、テロ、青年犯罪、薬物中毒等の様々な負の要素を正に変えていくためにも絶対に必要なことです。比較的恵まれた環境にあっても、数多の苦悩に苛まれます。私たち日蓮正宗信徒は、本当の不幸の原因が誤った見識にあることを教え、救っていかなければなりません。
 私は、明年の登山に世界各国から信徒が集って記念法要に参加し、三宝様を礼拝し、この近代社会においても、御在世当時と同様に真実をお示しになられている『立正安国論』提出の意義をお互いに認識するときを、今から待ち遠しく感じております。

●それでは最後に、日本の法華講員の皆さんに一言お願いします。
トゥルーネン
 私は、日本の全法華講員が、御本仏日蓮大聖人様のお生まれになった国、大石寺のある国に生まれてきた福徳を感じていると思います。それぞれの住む地域に寺院があることに感謝していると思います。私は、日本の法華講員の皆さんが、私たちより信心の様々な経験を積んでこられた家族・親戚のように思います。様々な障害や法難に耐えた御僧侶と法華講の皆さんがいなければ、私たちは真実の仏法に巡り合えませんでした。皆さんにはとても感謝しています。
 そして、私はいつも大聖人様の次の御言葉に励まされています。『立正安国論』の、
「汝早く信仰の寸心を改めて速やかに実乗の一善に帰せよ。然れば則ち三界は皆仏国なり、仏国其れ衰へんや。十方は悉く宝土なり、宝土何ぞ壊れんや。国に衰微無く土に破壊無くんば身は是安全にして、心は是禅定ならん。此の詞此の言信ずべく崇むべし」(御書二五〇n)
です。ありがとうございました。