平成20年1月16日付

 一九九五(平成七)年より、海外部が中心となったイタリア共和国への布教活動が開始された。以来、僧俗の広布への歩みは、十余年の時を経て、着実に実を結び始めている。中でもミラノは、家族・友人のネットワークを生かした情熱溢れる折伏の輪が広がっている。
 今回は、信心にもそんな一面が垣間見られるミラノ在住のパオラ・ルッピさんにお話を伺った。
●日蓮正宗を知ったきっかけを教えてください。
ルッピ
 結婚前に勤めていた職場の元同僚が、一昨年、急性白血病のため三十四歳という若さで亡くなりました。そして彼の葬儀の席で、主祭が遺族に対して「天使と天国で今頃楽しく安らかに過ごしていることでしょう」と慰めている言葉が聞こえてきました。私は、若い奥さんと二歳の子供を残して亡くなり、安らかに楽しくとは一体何なのかと疑問を抱き、重い悲しみが込み上げ、この言葉には何の意味も感動もないと落胆しました。
 それから悶々とした気持ちで、毎日暗い顔をして過ごしていた頃、子供を同じ学校へ通わせている日蓮正宗信徒のヘルガさんから、私たちは罪障を消滅し宿業を転換できるという話を初めて聞き、今までにない納得のできる話に目が開けた思いがしました。
 一カ月後、日本からイタリアに日蓮正宗の御僧侶が来られるからと誘われた会合に出席し、話を伺うと、理路整然とした内容にさらなる感動を覚えました。以前の宗教では私の疑問を一つも解いてくれませんでしたが、大聖人様の仏法には、生命のとらえ方をはじめ、すべての疑問に対し、心底納得できる明解な答えがありました。
 そして、二〇〇六(平成十八)年十月二十三日に、晴れて御授戒を受け、入信いたしました。
●入信後の功徳の体験を教えてください。
ルッピ
 昔の自分は、自己保身のために相手に攻撃的になり、寛容の心に欠けていました。昼間は皆の前で明るく朗らかに振る舞っても、夜はベッドの中で泣いていました。人生や将来に対しての恐怖と悲しみ、自分に対する自信のなさなど、いつも不安に脅かされて生きてきました。
 しかし、この信心を始めてから、それが嘘のようになくなりました。私はいつも御本尊様に守られ、安心して暮らすことができ、すべてにわたって落ち着いて振る舞えるようになりました。これは大きな功徳だと感謝しています。
●折伏に対して何か心かけていることはありますか。
ルッピ 特別なことはしておりません。ただ、まずは身近な人である、家族、友人、家政婦、アパートの管理人、両親など、誰にでも身構えることなく自然と心の赴くままに仏法の話をします。そして、その人たちにも私と同じように幸せになって欲しいと、強く願って唱題します。
 また、「どんな問題、悩み、障害に対しても、ただ単に受け身で我慢するのではなく、この信心によって人生を切り開いていくことができるとの確信に立ち、自分自身に具わる強い生命力を引き出して物事に立ち向かい、常に御本尊様に感謝の気持ちを忘れず、日々の勤行・唱題をしていくのですよ」と激励をしています。「こう言っている私も努力しているのだから、あなたにもできないことはないのよ」と。
 このように折伏を展開し、入信して一年余で、友人たち、家政婦、双子の息子たちが次々に御授戒を受けさせていただきました。まだ信心歴は浅いですが、ミラノグループの人たちと異体同心して助け合って折伏が成就し、本当に感激しています。
●では次に、カソリックのいわゆる総本山であるバ チカンがあるという特殊な国情での信心活動について聞かせください。
ルッピ
 イタリアにバチカンがあることにより、その因習が生活すべてに浸透していますので、仏法への信仰にブレーキをかける人が多いようです。私も昔はミサ等によく通っていましたが、いつも背中や肩に重たい煉瓦(れんが)を載せられたような耐え難い感覚を覚え、神の“さだめ”を我慢しなければならないことに悩んでいました。
 しかし、大聖人の仏法では、運命ではなく、純粋な信心によって自分の三世に亘る宿業を転換でき、いかなる苦悩や障害をも乗り越えることができます。このようなすはらしい教えを自分一人だけのものとせず、皆が幸せになれるよう、より多くの人に伝えたいとの思いで一杯です。
 ただ、イタリアの人にとって、仏法は未知の存在ですので、まずは身近な人たちにこの仏法の話をして、幸福は自身で築けるということを、これからも伝えていきたいと思います。
●『立正安国論』正義顕揚七百五十年に向けて、決意を聞かせください。
ルッピ
 今、自分の一番の目標は、主人を入信に導くことです。彼は仕事も順調で健康でもあり、何にでも自信があるためか生老病死ということが念頭になく、素直に話を聞いてくれません。「一寸先は闇」という言葉はイタリア語にはありません。それでも、焦らず、辛抱強く『立正安国論』正義顕揚七百五十年に向けて努力していこうと思います。
 二〇〇九(平成二十一)年には、私が折伏した友人たちと共に、家族四人が皆揃って大御本尊様まします総本山へ参詣させていただけるよう、毎日唱題を重ねていきたいと思います。