平成19年11月16日付

キリスト教文化の中、油断なく正法を伝持
夫婦一体の折伏 今年も目標達成
  二〇〇三(平成十五)年八月三十日、パリに隣接するモントレイユ市に妙源山信行寺が創建された。八月三十一日にはパリ市内で宗旨建立七百五十年慶祝記念ヨーロッパ総会も開催された。いずれも総本山第六十七世日顕上人猊下の大導師、御臨席を賜った大慶事であった。
 その日から発心を重ね、夫で講頭でもあるブルノー・ルウーさんを助け、夫婦一体で折伏に精進するマリー・工ルソン・ルウーさんに、フランス布教の現況と、将来への展望、またご本人の決意を伺った。
●マリーさんは本年八月の海外信徒夏期研修会に参加され、閉講式では参加者を代表して謝辞も述べられましたね。
マリー
 はい、お陰様で各国の皆さんと楽しく有意義な研修でした。
●直前に、七十六歳になるお母さんへの折伏が成就して、御授戒、御本尊御下付、さらに入仏式を済まされ、お母さんと共々に登山参詣されたと聞きました。
マリー
 母に対しては長期にわたり折伏を進めてきましたが入信には至らず、今回のことは、奇跡と言ってよいほどのことでした。
 入仏式の際、母はご登山を決意していましたが、実現は夢のまた夢という状態でした。しかし、老齢で病気がちであった母が、毎日熱心に歩行訓練を重ね、ついにはご登山が叶い、総本山内では、むしろ私よりも元気でした。
●ご主人共々日蓮正宗の信仰歴が長く豊かであるにもかかわらず、お二人共、入信を二〇〇三年三月とされているとのことです
マリー
 はい、その通りです。主人は三十五年以上、私も二十年ほどの信仰歴ですが、それは創価学会でのことです。主人は、青年部の最高幹部の一人として活動し、多大な過ちを重ねました。また、人間的にも未熟で、多くの方々に迷惑をかけてきました。そこで、二人でよくよく話し合って、勧誡を賜ったその日を新たな入信日とし、一からやり直そうと決めた訳です。


●フランスは、私たち日本人から見ると「花の都パリ」、豊かな文化国家という印象が強いのです
マリー
 私たちも、その豊かさを享受している面は確かにあります。社会保障を含め他国と比べて恵まれた社会制度もあって、現代国家として充実しています。ただしその反面、個人個人の心理、社会の形態などあまりに複雑化し、個性、自由、平等の尊重を主張するあまり、心の豊かさ、他者への思いやりの欠如が深刻な社会問題を発生させています。かくいう私も、人生の半ば以上は甘えや我がままのために自分を苦しめ、他人を悩ませる在り方でした。私も含め、
「心の師とはなるとも心を師とせざれ」(御書七九四)
との御金言に背き、自己中心の在り方に終始しているのが、フランスの特徴と言ってよいと思います。幸い私は日蓮正宗の信仰に縁できましたが、正しく常識豊かな言動を基に一人でも多くの人々に正法を伝え持たせたいと思います。
●フランスにおいては、折伏の推進とその成就には多くの困難があると伺っていますが、どのような難しさでしょうか?
マリー
 折伏が容易でないのはフランスだけではないでしょうが、特に伝統的にカソリックの教えと精神が縦横無尽、それこそ隅から隅までキリスト教文化の中にあります。有形無形、知らず知らず六根のすべてがその影響を色濃く受けているという現実を認めざるを得ません。油断すると、いつの間にか自らの心身が日蓮大聖人の仏法の教義と精神から遠く隔たってしまうという雰囲気の真っただ中にあります。したがって、他者への折伏と同時に、まず自身への折伏を瞬時も忘れてはならないと自誡しています。
●フランスにおける哲学は、高く深いものとして知られていますが、人々の仏教観は、どのようなものですか。
マリー
 フランスの知識階層にとって仏教は、宗教というよりは哲学の一つとして認識されている状況にあります。フランス人にとっては、理解・判るということがすべてであり、仏教理論を学習研究し、瞑想が加わって頭脳的に満足すれば、それが「成仏」と思っています。日本やアジアの法華講の皆さんの眼から見れば、「仏法の本質から遠く外れた人々」と見られても仕方がないと思います。
 また仏法と言っても「ZEN」や「チベット仏教」等はフランス人にとって受容し易い、言わば仏法を信行するのではなく、思索・研究としている感があります。
●お話を伺っていると、日本の私たちとは、別次元でのご苦労が多いと実感します。そのような状況の中で、何故、日蓮大聖人の仏法が求められるのでしょうか。
マリー
 二つの大きな理由があると思います。第一は、東の思想つまり仏教、中でも日蓮大聖人の仏法は、「善と悪」、「神と人」という二極の対立を超越した「妙」、「中道」を完全に説き切って、西の思想つまりヨーロッパの哲学の行き詰まりを実感している人々に希望を開いているということです。
 第二は、一見豊かなフランスですが、他国と同様に富の差別化が進み、また個人主義、自由主義の伸展の中で多くの社会的矛盾が生まれ、新たなる深刻な苦悩が全体に充満しつつあります。四苦八苦の存在はどの国でも変わりがないはずですが、これに直面したときに「挫折するか」「超越するか」の二つに一つしかありません。大聖人の仏法、日蓮正宗の信仰には、人生の苦悩を根本的に解決する道が開かれていますから、今はこれに気がつく人が少なくとも、私たちの熱意で、求法の人々は必ず多く誕生すると確信しています。
●信行寺の法華講結成は二〇〇五年九月と聞いていますが、現状を聞かせてください。
マリー
 フランスは、宗教的存在・宗教的活動を認め保証する法律がありますが、日本や他国と同一の展開は不可能です。現在、活動家と言い得る人数はとても少ないのですが、昨年、本年と折伏目標は成就できました。また、嬉しいことに、この一年間は多くの家庭で法統相続が実現し、それぞれ新規に御本尊を御下付賜っています。
●今後の抱負を聞かせてください。
マリー
 二〇〇九年七月を中心とする『立正安国論』正義顕揚七百五十年に対する私たちの使命・役割の完遂を一大目標にしています。ただしそれは広宣流布の大願業成就への一里塚です。異体同心は言うほど簡単ではなく、難しい面もありますが、これを実践しながら相互に認め合い、助け合い、励まし合って行けば必ず、本門戒壇の大御本尊・日蓮大聖人の大慈大悲を賜って一人ひとりの功徳溢るる人生が築かれ、また自ら一国広布への前進の礎も確立されると考えています。私の目標は南条時光殿の奥方のごとく「婦徳」を具えた信仰者をめざす、賢女でありたいとの自覚を強めているこの頃です。