平成16年9月16日付

 韓国、現在、海外部より認められた八つの信徒会が存在する。
 本年よりは、御僧侶を中心として各信徒会の会館で御報恩御講が奉修されている。加えて、現地での御授戒・御本尊下付も行われるようになった。今、未来に向けて信徒が一丸となり、「組織の統合」「布教所の設立」を模索している。
 そのような中、今回は、韓国の信徒会の中でも数千人の信徒が所属する、最大の規模を誇る「東開信徒会」で会長を務める踞熙燦(ヨム フィ チャン)さんにインタビューした。踞熙燦さんは青年部長を経て一年前に会長に就任した。どこまでも純粋な信心を貫こうとの一念で若さと情熱をもって、平日は地元で、週末は泊りがけで韓国中を駆け回っている。
●入信の動機について聞かせてください。
踞熙燦
 私は一九七一年二月十六日に近所に住む婦人の勧めにより、家族全員で日蓮正宗に入信いたしました。
 私の家は代々、民間信仰の祈祷や占いのようなことをする家系でした。そのためか、代々どこからともなく聞こえる声に苦しめられたり、妄想を抱く人が多く、私の父は、それから逃げるようにいつも酒に酔っていました。そんな状態でしたので、藁にもすがるような気持ちでの入信でした。中学生だった私は、何も判らないながらも一生懸命に信心しました。

●入信後の体験をお聞かせください。
踞熙燦
 家族がそろって勤行して、やがて信心が生活の中心になると、それまでとは一変して家庭内は明るくなりました。酒の飲み過ぎで内臓を壊していた父は、入信したころ医師より余命一年と宣告されていましたが、その後十年も寿命を延ばすことができました。
 その後私は結婚し、座談会の日は家業の花屋を早く閉め、家族そろって参加するように努めてきました。
 しかし、仕事・組織・家庭での責任が重くなるにつれて、その逃げ場として私は酒を飲むようになりました。私の耳の中に鬼神が住んでいるという妄想が起こり、それを打ち消そうとしてはまた酒を飲むという悪循環を繰り返すようになってしまいました。
 その酒癖はだんだんひどくなり、発作的にマンションの五階から飛び降りたこともありました。その後も何度か禁酒を御本尊様に誓いながら挫折を繰り返していたものの、家族の強い信心と愛情に支えられながら、何とか大きな問題はなく過ごしていました。
 ところが二〇〇一年、総本山大石寺の御大会法要の登山の最中に、今考えても恥ずかしいことなのですが、脳卒中で倒れてしまいました。フジヤマ病院で目を覚ました私は、目の前にいらした韓国担当の御僧侶の姿を見たとたんに、「こんなことではいけない。御本尊様に申し訳ない」と、心から思い、涙が止まらなくなり、思わず題目を唱えていました。そして、その日から完全にアルコールを断つことができました。
 私は、五階から落ちても、大石寺で脳卒中で倒れても、まだ生きています。そのことを御本尊様に感謝申し上げ、今後はしっかりと信心を根本に生きていこうと決意いたしました。
●踞熙燦さん自身の折伏の実践についてはいかがですか。
踞熙燦
 組織の活動とは別に、どんなに忙しくても一年に一人以上の折伏をするという決意で実践しています。そのため、心の中では常に折伏のことを考えています。それくらいの気持ちがないと、私にはとても一年に一人以上の折伏は成就できないからです。

●折伏の一番難しい点は何でしょうか。
踞熙燦
 韓国では、日本に対する悪感情が強く、偏見もあるので、話を聞いてもらうこと自体がたいへんなことです。しかしその反面、韓国はかつて大乗仏教が盛んであった歴史を持ち、また、漢字文化圏でもあることから、ひとたび関心を持つと、受け入れやすい面もあるようにも思います。
 何にしても、折伏とは本来簡単なものではなく、その苦労も修行だと思っていますし、実際に功徳を実感できますので、全然苦にはなりません。とにかく一人でも多くの人を救っていかなければならないと考えています。

●組織中心者としての心構えを教えてください。
踞熙燦
 中心者の役割はたくさんあると思いますが、最も大切なことは信徒が気持ちよく信心できるように努めることだと思っています。難しいことではありますが、相手の気持ちを理解してあげられるように、時間をかけてがんばっていきたいと思っています。
 しかし、問題は、時間が限られていることです。今私は仕事を週四日に減らして活動していますが、それでも地域が広範囲なので時間が足りません。もっと時間をうまく使っていかなければならないと実感しています。
 自分にできること、やらなければならないことを整理して、題目を唱えながら効率的に動いていかなければならないと思っています。そして、過去にはいろいろなことがありましたが、今こそ韓国全体が異体同心の信心を持って団結しなければならない時だと思っています。その上からも東開信徒会は、どこの組織よりも御法主上人猊下の御心に叶った信心の実践をモットーにしていこうと、思っています。

●最後に、日本の法華講員に対するメッセージをお願いいたします。
踞熙燦
 最近日本では韓国ブームが起こっていると聞いています。歴史的には本来、韓国と日本はとても近い関係でしたが、近年の辛い過去から未だに脱却できずにいるのが現実です。
 韓国釜山市の郊外からは晴れると対馬が見えます。そこには日蓮正宗の寺院があり、御僧侶がいらっしゃいます。しかしその間には国境はもちろん、反日感情が横たわり、距離を遠ざけています。
 私たちは日蓮大聖人様の教えを通して、本当の意味でお互いが「近い国」にならなければならないと考えています。その中にこそ韓国の広宣流布は存在するものと思っています。そのためにも、日本の法華講の皆様とより多く交流して、いろいろなことを学んでいきたいと思っています。よろしくお願いいたします。