![]() |
![]() |
SGI破門以後にみる海外布教の躍進 海外部長 尾林日至御尊能化 平成二年末に惹起した創価学会問題を境にして、本宗は海外布教においても宗門主導へ大きくハンドルを切った。特に日本とは大いに事情を異にする海外布教の主導権は、長く創価学会=SGI(創価学会インタナショナル)にあった。それが平成三年三月五日をもって、SGI会長一任の方針を撤廃したのである。それ以来宗門主導、僧侶主体の布教が進められてきたが、そこには想像を絶する種々の困難が続出し、それはあたかも海図なき航海にも似た茨の道の開拓でもあった。 平成三年当時、海外の拠点はアメリカとブラジルにしかなかった。最も信徒が多く分布するアジアには、たった一つの拠点も存在しなかったのである。アメリカには、NST(日蓮正宗寺院)という法人のもと既に六力寺の体制が整っていたし、また南米のプラジルにもサンパウロに一力寺があった。この七力寺に住職と在勤者合わせて十五名の僧侶が派遣されているのみであった。 それから約十三年を経た海外布教の陣容は、十一の寺院をはじめ布教所・事務所・出張所等を合わせて十三カ国に二十六カ所の布教拠点に住職・在勤者合わせて三十六名の常駐僧侶が活躍している。このSGI破門以降における海外布教の進展ぶりは、数字の上においてもハッキリあらわれている。しかし、それでもなお、拠点のない国や僧侶が常駐しない国はまだたくさんある。寺院の建立と僧侶の常駐を切望するのは、日本からの遠近を問わず、またその規模を問わず、いずこも同じである。特に世界に先駆けて正法が伝わった隣の大韓民国、周辺の国には既に僧侶が常駐しているタイ、そのほかヨーロッパのイギリスやイタリア、そして北米カナダなどでも寺院の建立や僧侶の常駐が火急の課題となり、その機も熟しつつある。 また海外の信徒数は、インドネシアの五十九万人を含めておよそ六十三万人に上る。その分布は、アジアを中心に北米そして南米、さらに欧州、アフリカ、オセアニアと世界全域に及んでいる。しかし比率としては、韓国・台湾・東南アジア・スリランカなどアジアが大半を占める。 地域的な特長を見てみると、アジアにおいては家族全体の信仰が顕著であるが、欧米の国々では、個人主義的な風潮が強く家族ぐるみの信仰はなかなか難しい。こうした中で、特に台湾広布の発展がめざましい。平成九年四月、台北に本興院が開設されて以来、これまで約六年の間に五力寺体制にまで進み、三千人からスタートしたメンバーも一万六千名を越える規模にまで発展している。一方スリランカの爆発的な折伏の進展も特筆すべきものである。 ところで今、東南アジアには、多くの華人がいる。十六世紀から約四百年間にわたって欧米列強の植民地支配が続いた時代に、たくさんの中国人が東南アジア各国に入植。かつては華僑と呼ばれた人たちも、何世代も経て今では華人と呼ばれ、インドネシアはじめ東南アジア各国に約千五百万人が住むといわれている。その昔労働者としてそれぞれに国や地域に入植した華僑たちも、今では経済的にも社会的にも大きな影響力を持つまでになり、東南アジア広布においても、それぞれの国で中心的役割を担って活躍している。今から四百年前には想像もできなかったこの事実は、釈尊の在世から末法に及ぶ壮大な仏法流布の流れの上から見ても、実に不思議なことである。 さて、おしなべて海外布教は、日本国内とはかなり事情を異にする。インドネシアやアルゼンチンなどには、宗教省や宗教局などの日本には馴染みのない名称の省庁が存在する。実際、寺院建設も年中行事を含む布教活動も、すべてこうした省庁の管理監督のもとに行われている。 インドネシアでは、独立時に立てられた「建国五原則」の中に全知全能の神への信仰、唯一絶対神への信仰が義務づけられている。同国の宗教比率は、イスラム教が九十五パーセント、それ以外の三パーセントが仏教、その他がキリスト教やヒンズー教である。そうした中で、本宗が同国政府から容認されているのは、憲法前文にも謳われる全知全能の神が、日蓮正宗においては、久遠元初の自受用身、久遠元初の御本仏がそれに当たるという教義的な説明を政府が認証してくれているからにほかならない。 また日本においては種脱相対の教義の上から、大聖人様と釈尊との間には下種の御本仏と脱益の仏という明確な違いを立てて説くことに何の制約もなく自由である。しかし釈尊を、宗教上あるいは歴史上の偉人としてヒンズーの神々とともに崇め、仏像を家の中に安置するのが一般的なインドでは、ダイレクトに釈尊を誹謗したり、その教えを直接的に強く破折することは難しい。それを実行した場合、途端に不快な顔をされ大きな反発を買うことになって、それ以上先には立ち行かなくなってしまうであろう。やはりそこに少なからぬ配慮が求められてくるのである。 一方、インドネシアやシンガポール等々においては、他宗教を公衆の面前であからさまに破折誹謗することは、法律的に禁じられている。特に淡路島ぐらいの広さしかないシンガポールのような国では、すみずみまで目が行き届いていて、すぐ取り締まりの対象になり、混乱を引き起こす不穏な人物ということでマークされかねない。したがって、「折伏」という言葉もダイレクトに使うことには、注意が必要である。折伏の上の摂受的な布教にならざるを得ないのが現実である。また座談会などの集会は、たとえメンバーの自宅であっても、無届けで大勢集まることは禁じられている。寺院にしても正式に政府に登録した建物でなければ集会や儀式が許可されない。そういう点にも気を付けながら慎重に布教を進めているというのが実状である。 こうした現状を考慮して、今、海外部では、海外広布の進展に合わせて一層の広布の促進を図るために、海外布教研究会を発足させ、五つの分科会に分かれて調査研究を精力的に進めている。具体的には、布教基盤を構築するための現地法人設立に関する調査研究、国ごとの適正な布教方法・布教形態に関する調査研究、謗法厳誡と海外布教との問題、文化一般や生命倫理の諸問題等に対する本宗教義上から適正な見解、諸宗教の研究と異教徒の住む国における布教の在り方などである。どれ一つとっても等閑視できない重要な問題ばかりである。今後一層海外広布が進めば進むほど、これらの課題について真剣に考え取り組んでいかなければならない。 |
シンガポール![]() マレー半島の先端、ほぼ赤道直下に位置するシンガポール。その法城、開妙布教所には現在約二千八百名の信徒が所属し、日夜自行化他の信行に喜々として励んでいます。 御法主上人猊下より賜った新たな御命題「『立正安国論』正義顕揚七百五十年」の地涌倍増に向かって、本年より毎年四百五名以上の折伏を完遂しようと、僧俗和合・異体同心して唱題行と折伏行に邁進し、第一年目にあたる本年は、現在既に四百名の折伏を達成しました。 昨年の宗旨建立七百五十年慶祝記念海外信徒総登山では、所属信徒の半数にあたる千二百五十名が登山。大御本尊様への御内拝や御法主上人猊下の御指南を戴き、論義式をはじめ宗門の伝統法会に参列した参加者は、身の福運に歓喜し一層のシンガポール広布を誓い合いました。平成二十一年には、倍増の二千五百名の陣容で御報恩の登山をすることをめざしています。 シンガポール信徒の広布への熱誠と真摯な信仰姿勢は、日々の活動や法要への参詣者数に顕著にあらわれています。まず御法主上人猊下に連なって日本ないし世界各国で呼応して始まった広布唱題会には当初約五百名ほどでしたが、啓蒙によって徐々に増え、今では内陣部分まで立錐の余地がないほどです。 (写真) ![]() また御報恩御講には、毎回約千二百名が参詣します。先月奉修された御会式には、御逮夜と御正当の二日間で千六百余名が参詣し、受付ロビーや会議室、さらに玄関ホールも埋め尽くすほどでした。 平日の布教所の勤行でも、朝は五十名、夕方は百名を下回ることはなく、特に月曜と火曜の午後二時から五時半まで行われる「折伏達成・寺院建立祈念唱題会」には、婦人部を主体として常時約二百名が参加します。 現在、シンガポールの広布推進の体制は、十支部・二十四地区・九十二班体制です。各支部別に毎月、布教所での唱題会と座談会を交互に行い、それが折伏推進の原動力となっています。こうした進境著しい広布の前進のさらに大きな原動力は、深い信頼関係に結ばれた僧俗和合です。長年同国布教に携わってきた責任者・滝川信雅御尊師の指導力に加え、本年四月から在勤者として戸沢良昭御尊師が着任。この二人体制がさらに大きく同国の広布推進を支えています。 開妙布教所は、八階建てビルの二階部分に開設されています。活動の現状と今後予想される新入信者の増加、法要や行事への参詣者数等を考えると狭隘の感が否めません。今、布教所の僧俗は、より正法をシンガポールの国土に真に根付かせるため、一日も早い寺院建立をめざして、御本尊様への真剣な唱題と祈りを積み重ねています。 |
スリランカ![]() 古代から仏教国として栄え、現在も人口の七割が小乗仏教徒と言われるスリランカ。この国での真の広布が始まったのは、今から九年前、平成六年です。 当時はSGIを脱会してきた人を含め、わずか二十〜三十名の信徒でした。平成六年十月一日・二日に海外部より御僧侶が出張して出張御授戒が行われ、その後、毎年二回の出張御授戒に合わせて大折伏戦が繰り広げられ、破竹の勢いで正法を受持する人が増えてきました。 その足跡の一部を紹介しましょう。 平成十年 ・第二回海外信徒総登山(客殿新築落慶)に三十四名が来日、参加しました ・この年二回の出張御授戒で御授戒三百十七名・御本尊下付百四十三体 平成十二年 ・日蓮正宗センターを開所 スリランカのリーダーとして尽力してこられた小松喜代子さんとご主人のラクシュマン・ニレゴダ氏が土地・建物を御供養 ・二回の出張御授戒時に御授戒六百三十名・御本尊下付三百七十八体 平成十四年 ・宗旨建立七百五十年慶祝記念海外信徒総登山(初会)に五十四名が参加 平成十五年 ・宗旨建立七百五十年慶祝記念スリランカ総会を開催し、参加者一千名以上 ・二回の出張御授戒時に御授戒一千三十四名・御本尊下付七百二十八体 この成果は、日本とは国情・文化・歴史などの全てが違う中で、言葉に尽くせない苦労の中の結果です。 ![]() 第一に、現在は停戦中とはいえ、三十年にもわたる民族戦争の最中です。第二には、紀元前三世紀より仏教王国として栄えてきた国だけに、小乗仏教徒としての血が濃く流れている民族であり、第三には、日本との経済格差も大きく、登山の経済的負担がたいへん大きいことです。加えて、SGIや小乗仏教の関係者による妨害や嫌がらせを乗り越えての発展なのです。 昨年の海外信徒総会の席上、スリランカのデイリーパ・マデュシャン君(十三歳)が少年部代表の決意発表をして、大勢の方々の涙と感動を呼びました(大白法六〇九号掲載)。 あの少年と両親が登山する費用を工面するため、母親は公務員として永年勤めた職場を退職しました。そして、その退職金で家族全員が登山できたという舞台裏の話があるのです。 日本人の想像しがたい状況下で、当初の二百倍以上の陣容へと大発展を遂げてきたことは、御本尊様の御威光はもちろんですが、長の一念にほかなりません。 御僧侶が未だ常駐することができない現状にあって、小松さん・ニレゴダ氏夫妻の連携と信頼の両輪で、何の手本もない中で試行錯誤し、一切の指揮を執ってきたことは驚嘆に値することです。 そしてスリランカでは、今こうしている間にも、次の出張御授戒を待つ人が次々に増えているのです。 |
ニューヨーク![]() 本紙でも既報の通り、本年七月十五日(現地時間)、ニューヨーク市にあるグラウンド・ゼロの現場において、御法主日顕上人猊下の大導師のもと「同時多発テロ犠牲者追悼法要」が奉修された。宗史に残るこの御親修が、日本時間では七月十六日の『立正安国論』奏呈の日にあたり、時刻も丑寅勤行とピッタリ重なったのは、まことに不思議な時の符合であった。 この法要の大成功の裏には、実に様々な魔の跳梁があった。 成田出発時の執拗な尾行や盗撮はいつも通り。同日午前十一時二十分、御法主上人猊下御一行を乗せた飛行機が無事ニューヨークのJFK空港に着陸したものの、機体はピタッと停止して動かない。しばらくしてターミナル変更の案内があった。到着予定のターミナル内で直前に不審物が見つかり、加えてコンピュータがダウン、入国審査が不可能となったとのこと。 二日前、本隊に先駆けて海外部主任が入国した際は、到着ロビーに出るや否や十人近くのカメラマンやインタビュアーに囲まれ、無数のフラッシュがたかれる中、「イスラムに謝罪を」等と詰め寄られた。本隊の入国阻止を狙う威嚇だったのだろう。 明けていよいよ法要当日の十五日。港湾局との事前の打ち合わせで、グラウンド・ゼロでの法要時刻は午後一時から二時までの一時間と限定されていた。正午過ぎに、御法主上人猊下をお乗せする乗用車はホテル前に待機。ところが妙説寺のメンバーを乗せ、祭壇を運ぶはずのバスが出発時刻のタイムリミットを過ぎても来ない。 事の次第を港湾局に説明すると、現場に入ってから一時間の滞在ができるとの話に安堵した。バス遅延の真相は、何者かが妙説寺講頭の名前を騙ってバスをキャンセルしたということだった。彼らの、追悼法要を絶対に阻止したいという凶悪な意思が感じられた。 代替の車を手配してグラウンド・ゼロヘ到着すると、時計の針は午後一時半。予定より三十分遅れたことによって、日本時間では丑寅勤行の開始時刻とピックリ符合した。 午後一時四十分、出仕鈴と共に御法主上人猊下が祭壇に御出仕。朗々たる御法主上人猊下の大導師に唱和する読経の声が周囲に響き渡り、高層ビルが建ち並ぶニューヨークの真っ青な空に真っ赤な台傘がよく映えた。法要参加者一同は、御法主上人猊下に随従し妙法の法味を全犠牲者に捧げ、心から冥福を祈った。意義深い追悼法要に続いて献金の贈呈が行われた。 また夕方、御法主上人猊下はマンハッタンの中心地タイムズ・スクウェアに六月末に開設したばかりの妙説寺出張所を御訪問。お疲れのご様子もなく、妙説寺の僧俗を激励された。 妙説寺支部のデニス・ハガティー講頭は、「私たちは二十一世紀を迎えるに当たり、東西冷戦を解決し明るい世界を予測していました。しかしながら同時多発テロを経験し、末法五濁悪世の仏説の正しさを実感しました。末世の縮図を経験したニューヨーク法華講員は、地に倒れた者が地によって立つとの御聖訓のごとく、グラウンド・ゼロの地より広宣流布の波動を世界に広げてまいります」と御法主上人猊下にお誓いした。 あれから四カ月、今、妙説寺僧俗は、六年後の「『立正安国論』正義顕揚七百五十年」に向けて折伏と育成に励み、法華講妙説寺支部千人の記念登山の実現に邁進している。 |