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テロ後の復興に携わり慈悲の心涌く
二〇〇一年九月十一日の朝、四機のジェット旅客機がテロリストにハイジャックされ、そのうちの二機がニューヨークの世界貿易センタービルに激突した。その後、ビルは崩壊し、約三千人の死亡者と多数の負傷者が出た。この悪夢のような出来事は、世界中にテレビ放映され、その後の世界の情勢を変えるものとなった。 二十世紀は人類史上、最も多くの戦死者が出た世紀である。その後、人類は東西冷戦、南北問題を克服したかに見え、二十一世紀は明るい世紀になると夢見ていた。しかし同時多発テロ以降、世界は、テロの脅威にさらされ、正体のはっきりしない相手との闘いで神経を磨り減らしている。 ニュー∃−クは、世界中の人種が共存し、世界経済の中心地としての活動を続けている。また、あらゆる宗教が共存している。 本来人類の幸せを促進するべき使命を持つ宗教が、かえってテロや紛争の温床になっている現実がここにある。今こそ全人類を救済する真実の宗教が求められている。 今回は、この大惨事を世界貿易センタービルの間近で体験し、地域社会の人々の先頭に立って急難・救援に立ち向かった法華講員、ダイアン・ラプソンさんにお話を伺った。 彼女は今年の二月、アメリカ政府関係者の前で、自身のテロ救援活動を通じて、昨今の様々な危機にいかに対処すべきかを発表する機会を与えられた。このことは、三月十六日付の『ワシントンポスト』でも報道された。 ![]() ●まずはじめに、あなたが初めて御本尊様に巡り合い、そして入信して勤行に励んだ頃のことをお聞きしたいのですが? 私はニューヨーク市で御本尊様に巡り合い、一九七○年に入信しました。そのとき二十歳で、ちょうど結婚して間もなくのことでした。 しかし、その後ほどなく離婚した私は、落ち込んで将来に絶望していました。 このとき幸いにも、この信心をしていた友人のアパートに同居することができました。 それからは、この友人とともに仕事と信心修行に専念したのです。毎日の唱題と折伏、そして教学の積み重ねにより、たくさんの功徳を積ませていただきました。しかし残念なことは、日蓮正宗の御僧侶に直接に縁する機会がなく、本当の信心を学ぶには限界があったことです。 その後、一九七九年の日蓮正宗アメリカの大幹部たちの教義逸脱、謗法が起こり、それを契機に不信を抱いてしまい、しばらく御本尊様に真剣に勤行できずに悶々とした日々が続きました。 ●退転状態になってから、今回の同時多発テロに遭遇するまでのことについて教えてください。 私は、地域社会の人々をお世話するリーダーになり、世の中のために尽くすことを生き甲斐と感じるようになっていきました。この頃ふと気がつくと、勤行や唱題を口の中でしていることがありました。 友人は、常に私を唱題会や会合に誘い激励してくれていました。そのお陰で、五年前からは毎月のように唱題会に参加するようになりました。 その結果、不思議に勇気が涌いてきて、私の住んでいるビルの約四千人の住民自治組織の副委員長にまでなりました。 ![]() ●同時多発テロのときの体験を話してください。 世界貿易センタービルは、私の住んでいるビルから三ブロック離れた所にありました。あの日はちょうど選挙の投票日で、私は路上で投票を呼びかけていました。 突然、大型の飛行機が超低空で飛んできたのが目に入り、その瞬間、私の心は恐怖で凍りつきました。 最初の飛行機が世界貿易センタービルに激突して爆発したのです。間もなく二機目が激突しました。私は多くの飛行機が次から次へと衝突する錯覚に襲われました。 路上の人々は泣き叫び、恐怖に震えていました。超高層のビルの上から次々に人が降ってきました。ビルが崩れ始めたときはそれが自分たちの上に降ってくるようで、自分に死が迫ってくるのを感じました。 そのとき突然、私の中に、自分の命よりも人々の命を大切に感じる心が涌き上がってきたのです。それは、まるで今まで唱えてきた題目の貯金が一気に引き出されたような気分でした。 私はすぐさま自宅に飛んでいき、御本尊様を身に着けてお護りし、そして、恐れおののく地域社会の人々の先頭に立ち、さらなるテロに供えてチームを作りました。地域社会の人々が外部の助けなしに十日間生き延びられるように水と食料と医薬品を集め、絶望の淵にいる人々に、御本尊様の偉大さを話しながら、自身も真剣に唱題に励み、激励を続けました。 事件から何週間かして、私のビルの安全が確認された後、グラウンド・ゼロの周辺ではテロ後初めてとなる御本尊様が我が家に御安置できたのです。 ●テロの後遺症に苦しむ世界の人々に対するメッセージと、あなたの今後の希望と決意をお話しください。 最近、私は政府機関の招きでワシントンD.C.に行き、テロによる危機をチームワークで乗り越えた体験をもとに、緊急時の地域社会間の相互扶助について、アメリカ健康省のリーダーたちの前で発表する機会を得ました。そのなかで私は、正しい宗教の必要性、また、「不染世間法 如蓮華在水」の経文を引いて法華経を基調とした信仰の大切さを訴えました。 この発表を聞いた人の中には、初めて聞く仏教の話に感動する人も少なくなく、私が怯(ひる)まず立ち向かったその原動力が信仰にあったことに、一層感銘を受けたとのことでした。 一年前、世界貿易センタービルの三ブロックの以内には、私の御本尊様のみが、御安置されていました。今は七世帯のアパートに御安置されるまでになりました。私は人類の宿業の深さの証言者として、この信心に励み、まず自らの宿業を転換し、世界の人々に正法を弘めてゆこうと決意しています。 |