令和4年4月16日付
                お数珠について
 皆さん、こんにちは。
 いよいよ、新学期が始まりました。先生やお友達、勉強内容など、たくさんの新しい出会いがありましたね。楽しく充実した学校生活を送れるように、毎日の勤行・唱題に励みましょう。
 今月は、その勤行・唱題の時に、いつも手にしている「お珠数」についてお話します。
 お珠数は、修行を正しく行うための大切な法具です。先日、総本山で得度式が行われましたが、晴れて得度を許された新発意が、御法主上人猊下より最初に賜る御指南が、お珠数のかけ方です。それだけ、信心修行には欠かせない、大切なものなのです。
 では、お数珠が大切であることが判ったところで、改めて、皆さんと一緒に勉強していきましょう。

お数珠の起こり

 お数珠の始まりについては、『木(木+患)子経』というお経に、次のようなお話が出てきます。
       ◇
 昔むかし、古代インドに、波琉璃王という王様がいました。
 この国は、大国と大国の間にある小さな国で、いつも周りの国から攻められ、食べ物も少なく、さらに疫病が大流行して、人々が苦しんでいました。王様も、それをどうにかしたいと、たいへん悩んでいました。
 ある時、王様はお釈迦様のもとへ相談に行きました。お釈迦様に悩みを聞いていただき、「仏様の教えは広く深いので、すべてを実践することはできません。問題を解決するため、私にできる最も大切な修行方法を教えてください」とお願いしました。
 すると、お釈迦様は、「もし、様々な苦しみを生む原因である、煩悩を解決したいと願うのであれば、木(木+患)子(インド菩提樹の木の実)の珠を一〇八個用意しなさい。その一つひとつに穴を開けて、糸で一括りにするのです。

 それを、いつも身から離さずに持ちなさい。また、南無仏・南無法・南無僧と唱え、その唱えた数を、珠で数えなさい。唱える数を増すごとに、あなたの悩みは必ず解決できます」と教えました。
 王様はそれを聞いてたいへん喜びました。
 国に帰ると、すぐに数珠を千個作らせ、皆に与えました。そして王様たちは、仏様の教え通りに修行したのです。
 その結果、だんだんにこの国の悩みは、解決していくことができました。
       ◇
 これがお経に説かれているお話です。
 このお話から、お数珠を手に持って、仏様の教えの通りに正しく修行することの大切さが判ります。
 皆さんも、自分のお数珠を持っていますね。私たちも、御本尊様に向かうときは、お数珠を手にかけて合掌して、毎日、勤行、唱題を行うことが大切です。

お珠数の形

お珠数について、総本山大石寺の御歴代の御法主上人猊下が、その大切さや意義を御指南下さっています。
 たとえば、
・妙法蓮華経の五字を表していること。
・仏法僧の三宝を表していること。
・御僧侶が着す衣と同じ意義があり、煩悩を覆い、また、除く功徳があること。
・珠が丸いのは、円か(円満で欠けるところのない)な仏様の智慧を表わしていること。
などがあります。
 また、珠の一つひとつにも意味があります。
 たとえば、左右の房に、ひょうたんのような形をした珠がありますね。
 この珠について、総本山第三十一世日因上人様が『珠数秘決抄』や『袈裟数珠の事』に、総本山第四十四世日宣上人様が『数珠の事』に、お書きになられています。
 その中で、
・私たちの心と体を表わしている。
・唱題の功徳を漏らさないことを表わしている。
・私たちが御本尊様を渇仰(深く信じて慕うこと)する姿を表している。
・少欲知足(煩悩が盛んで強欲、ということがない)であるようにとの誡めを表わしている。
と、四つの意味があると教えてくださっています。
 この他にも、珠の数や配置、さらには紐の結び目までの、すべてに深い意味があると伝えられています。

お数珠は大切に

 皆さんも、御住職様・御主管様、お家ではお父さん、お母さんから、「お数珠を床に置いたり、粗末にしてはいけません」という言葉を聞いたことがあると思います。
 鼓笛隊に入っているお友達からも、スタッフのお兄さんやお姉さんが、「演奏のために楽器に持ち替える時、お数珠を畳みに直接置かないでね。もちろん、落とさないようにも気をつけましょうね」と、いつも呼びかけてくれたと聞きました。
 それは、今日お話した、お数珠の持つ深い意味と功徳を、大切にしましょうということなんです。
 千年以上も前の中国の書物にも、「数珠を仏様のように大切にしなさい」(『釈氏要覧』)と説かれています。
 また、お数珠を手にかけて合掌した時に、両手でもんで音を出してもいけません。
 これについては、総本山第六十六世日達上人様が、
 「(お数珠は)これは擦るもんではない。合掌というのが大事です」(日達上人全集)
と教えてくださっています。
 また、日因上人様も、導師の観念の妨げになるから、もんで音を立ててはいけませんと教えてくださっています。
 正しい修行には、正しい姿勢が大切です。皆さんも、お数珠を手にかけてしっかりと合掌しましょう。合掌する時は、両の掌と指をきちっと合わせ、姿勢を正して、導師の声に合わせて元気に勤行・唱題をしましょう。