平成22年3月1日付
日蓮正宗の基本を学ぼう
                日興上人の御生涯に学ぶ C
 
C謗法呵責の徳と諌暁継承の徳について
今回は日興上人の十徳のうち、謗法呵責の徳と諌暁継承の徳についてですが、どちらの御徳も『立正安国論』の正義を実践あそばされる御姿として拝することができます。

  謗法呵責の徳
 宗祖日蓮大聖人様は法華経の『勧持品』・『不軽品』等の明文を、一閻浮提第一の法華経の行者としての御自身の御振る舞いの上に身読され、弟子檀越に対しても常に謗法厳誡を御教示あそばされました。大聖人様に常随給仕された日興上人はこの御振る舞いを拝され、二而不二の境地に立たれて自らも常に邪義の破折・正義の顕揚に努められたのです。
 既に「教化弘通の徳」を拝する際にも触れましたが、特に熱原法難では大聖人様の御教示を仰がれた日興上人の厳格な御教導により、真の忍難弘通の精神が示されました。
 また身延離山は民部日向と波木井実長の四箇謗法に対する厳誡と破折であり、五老僧の師敵対に対しても断固としてその誤りを責められました。
 その五老僧への破折を簡略に挙げるならば、
@釈尊一体仏への執着を破して大聖人様出世の本懐たる大漫荼羅本尊の正意を示す。
A大聖人様と天台宗の仏法の相異を理解しない本迹一致の主張を破して、『寿量品』文底下種の南無妙法蓮華経こそ独一本門の大法であることを示す。
B像法摂受の修行法である如法経・一日経を破して、題目を正行とし、『方便品』・『寿量品』を助行とする日常の所作と折伏要行を示す。
C『立正安国論』等に示される神天上の法門に背く神社参詣を破してその正意を示す。
等の諸義があり、『富士一跡門徒存知事』『五人所破抄』等に明らかに示されております。
 特に神天上の法門は、守護の諸天善神が謗法の充満した国土を去って本処に帰り、その便りを得て入り込む悪鬼魔神の用きによって三災七難がもたらされる道理を示し、それがあらゆるところに悪い因縁と影響を及ぼす永久不滅の真理であることを説かれたものです。
 しかるに、第二十六世日寛上人が『報恩抄文段』に、
 「十方三世の諸仏乃至梵帝・日月・天神地祇、皆本地自受用一仏の内証に帰る」(御書文段 四三一n)
と御教示のように、自行化他の唱題を実践すかところ、現実に諸天の守護の用きが顕現し、本宗の正義も顕れるのです。
 このように日興上人の五老僧に対する破折をはじめとする謗法呵責の御振る舞いによって、大聖人様御在世当時から変わらぬ下種仏法の化儀が現在に伝えられているのです。

  諌暁継承の徳
 日蓮大聖人磯は『立正安国論』の提出をはじめとして三度にわたる国諌を行われましたが、封建社会当時の日本における広宣流布達成の重要な手段として、日興上人も国主諌暁を継承されました。
 大聖人様の仏法に帰依する民衆が増えれば増えるほど、権力者から不当の弾圧を蒙るのは明らかであり、時の為政者に徹底して諌暁を行う必要があったのです。
 第四世日道上人の『御伝土代』には、
 「日興上人は大聖御遷化の後身延山にて弘法を致し、公家関東の奏聞をなし」(日蓮正宗聖典五九六n)
と御示しになられています。「公家」とは京都の朝廷、「関東」とは鎌倉幕府のことを指し、主権である天皇を擁する朝廷方と、実際に政務を執り行う武家方の双方に対して国諌の申状を提出されていたことが伺えます。
 日興上人の申状は、正応二(一二八九)年正月・元徳二(一三三〇)年三月の武家方へ二書、募暦二(一三二七)年八月の公家方への一書の計三書の写本が現存しており、三書共に大聖人様の弟子と名乗られ、『富士一跡門徒存知事』に、
 「彼の天台・伝教所弘の法華は迹門なり、今日蓮聖人の弘宣し給ふ法華は本門なり、此の旨具に状に載せ畢んぬ」(御書 一八六八n)
と仰せのように、本門弘通を堂々と述べられています。
 現存する中で早期の正応二年の申状の末尾には「重ねて言上」との御文があるところから、正応二年以前にも諌暁を行われており、弘安八(一二八五)年にもその形跡が残されています。
 この弘安八年には、日昭・日朗等五老僧も申状を提出していますが、
 「五人一同に云はく、日蓮聖人の法門は天台宗なり。仍って公所に捧ぐる状に云はく、天台沙門云云」(同 一八六七n)
との『富士一跡門徒存知事』の御文や『五人所破抄』に示されるように、「天台沙門」「天台法華宗の沙門」等と名乗り、天台宗の流れを汲む法華経の教えを立てて国家を安んずるというもので、大聖人様の教え(寿量文底の三大秘法)に背くものでした。
 日興上人は、これら五老僧の違背を糾し、御高齢になられて後も弟子方に代奏を遂げさせるなど、御一生を通じて諌暁を続けられることで門下一同に弘通の精神を示され、これを継承された第三祖日目上人は、天奏を含め四十二度にまで及ぶ公家・武家への諌暁を行われたのです。
 国主諌暁の意義や方法は時代と共に変化しますが、立正安国の実践を一日も怠ることなく、正義を万代に残された日興上人の御遺徳を私たちはさらに未来広布へ向けて護り伝えていかねばなりません。

  法灯連綿
 日興上人の『原殿御返事』に、
「日興一人本師の正義を存じて、本懐を遂げ奉り候べき仁に相当って覚え候」(日蓮正宗聖典 五六〇n)
との御教示が存しますが、まさに日興上人が滅後付法の大導師として末法の御本仏大聖人様の正法を、一分も違えることなく後代に伝えられたからこそ、私たちはこうして本門戒壇の大御本尊に縁し、即身成仏の功徳に浴することができるのです。
 この大白法をさらに後世に護り伝えるためにも、御法主日如上人猊下の、
 「一切衆生救済の秘法たる大聖人の本因下種の仏法をもって、世のため、人のため、真の世界平和実現を目指して立ち上がり、憂国の士となって折伏を行じていくこと」(大白法 七八一号)
との元且勤行の御指南を指針として、本門戒壇の大御本尊と血脈付法の御法主上人猊下に信伏随従していかねばなりません。
 平成二十七年の新たな御命題達成と立正安国のさらなる正義顕揚に向けて、唱題行を根本とした折伏布教に精進してまいりましょう。