平成21年4月1日付
日蓮正宗の基本を学ぼう
 『立正安国論』を拝す
 B題号について 下―「安国」及び「論」の意義するもの

「安国」とは、三大秘法の正法を広宣流布することにより、国土が安穏になることです。
 『立正安国論』の御真蹟を拝しますと、「くに」の字は七十一カ所あり、国―十二カ所・図―四カ所・国―五十五カ所と三種が使用されています。
 即ち、
 国→玉→王法を用いて国を治める義。
 國→戈→武力を用いて国を治める義。
 囗(くにがまえ)の中に「民」→民→民衆の力用で国を治める義。
と拝することができます。その意義や使い分けは明らかではありませんが、そのすべてを含んだ上に、正法によって国を治める深い意義を拝することができます。
 さらに、大聖人は『御義口伝』に、
 「流布の国土とは日本国なり、総じては南閻浮提なり」(御書一七七二n)
と、正法流布の「国」は日本だけではなく、世界に通ずる意義を明かされています。また総本山第二十六世日寛上人が『安国論愚記』に、
「文は唯日本及び現在に在り、意は閻浮及び未来に通ずべし」(御書文段 五n)
と仰せの通り、「立正」の「国」またその「時」とは、一往、三大秘法の御本尊を顕された日本国のことであり、大聖人御在世当時の時を指しますが、真実の意義は全世界及び未来永遠に亘ることは明らかであります。

「論」と名づけること
 一般に「論」とは、道理を述べる・議論する等の意味で使われますが、仏教においては、仏の教えを「経」、菩薩の説を「論」、人師の説を「釈」と言います。
 しかしながら他宗他門の者は、自分たちの説に「経」や「論」を多用しており、日寛上人は『安国論愚記』にそれらの実例を挙げられた上で、「大聖人の書状を『論』と名づけることに何の疑いがあろうか」と述べられています。
 さらに、問答によって本義を顕していく文体は、格式の高さからも「釈」といった人師の説には収まるものとは言えません。そして何より大聖人の外用の御姿は本化上行菩薩であり、その御内証は、
「況んや復内証深秘の重は『我本行菩薩道』の本因妙の大菩薩なり。別して論と称すること、其れ深意有るか」(同)
と御教示のように、文底本因妙の大菩薩であって、畢竟、久遠元初即末法の御本仏に在すのですから、その肝要の意義から「論」として顕されたことを深く拝すべきでしょう。

「安国」とは「立正」による仏国土の実現
 御会式で捧読される『立正安国論』の中に、
「汝早く信仰の寸心を改めて速やかに実乗の一善に帰せよ。然れば三界は皆仏国なり、仏国其衰へんや。十方は悉く宝土なり、宝土何ぞ壊れんや。国に衰微無く土に破壊無くんば身は是安全にして、心は是禅定ならん。此の詞此の言信ずべく崇むべし」(御書 二五〇n)
との御文があります。
 この御文について日寛上人は、
「『寸心を改めて』とは即ち是れ破邪なり。『実乗に帰せよ』とは即ち是れ立正なり。『然れば則ち三界』の下は安国なり」(御書文段 四九n)
と示されています。
 前御法主日顕上人猊下が、
「立正安国は、信仰の寸心を改め、速やかに実粟の一善に帰するというこの文に明らかに示されておるのであります」(御法主日顕上人猊下御講義集立正安国論 二八一n)
と御講義されているように、破邪・立正によって私たちの住む世界全体を御本尊の功徳に包まれた仏国土に変革していくという、依正不二の道理に基づく「安国」の姿がこの題号に示されています。

「立正安国」の正義
 御法主日如上人猊下は常々、「折伏は一切衆生救済の慈悲行である」と御指南あそばされています。
 この「慈悲」とは世法の「慈悲」ではなく、
「日蓮と同意ならば地涌の菩薩たらんか」(御書 六六六n)
と仰せの「菩薩の慈悲」であります。
 たとえば、道に倒れている人を見て素通りすることができるでしょうか。隣家が火事に遭って消火活動を手伝わないでいられるでしょうか。
 私たちが折伏を行じないということは、倒れて苦しんでいる人をまたぎ、困り悲しんでいる人を見捨てることなのです。
 罪障という病に冒されている人に、正法による罪障消滅を教え、謗法という重荷を背負っている人を慈悲の折伏によって救ってこそ、「地涌の菩薩」なのです。
「早く天下の静謐を思はゞ須く国中の謗法を断つべし」(同 二四七n)
「唯我が信ずるのみに非ず、又他の誤りをも誡めんのみ」(同二五〇n)
と『立正安国論』に示された慈悲の折伏こそが「立正安国」の正道なのです。

「立正安国」の実践
 『立正安国論』は、国主諌暁の書であります。主権の所在や諌暁の方法は時代と共に変化しますが、正法を立てて一国乃至世界を安寧とする「立正安国」の実践に励むことは、私たち門下一同に対する大聖人の御遺命であります。
 御法主上人猊下が、
「『仏法は体、世間は影』との宇宙法界の根源の妙法に照らして示された大原則であり、この大原則を無視して、今日の如き混迷を極める苦悩と混乱と不幸を救うことはできません。
 大聖人が『立正安国論』を著された所以もここにあり、立正安国の原理を掲げ、本因下種の妙法をもって一切衆生救済と仏国土実現を目指していくのが地涌の菩薩の実践行であります」(大白法 六八五号)
と、『立正安国論』正義顕揚の意義を御指南あそばされているように、「立正」が「安国」の根本要因なのです。私たちは日蓮正宗の正しい信心によってこそ人々の身も心も浄化され、日本乃至世界中の平和がもたらされることを確信し、地涌の菩薩として、本年の御命題たる地涌倍増と七万五千名大結集総会及び五十万総登山の達成に向けて大きく前進してまいりましょう。