平成21年3月1日付
日蓮正宗の基本を学ぼう
 『立正安国論』を拝す
 A題号について 上―「立正」の両字について

「立正」とは破邪顕正
 総本山第二十六世日寛上人は
『立正安国論愚記』において「立正」の両字について、
「立正とは破邪に対するの言なり」(御言文段 四n)
と御教示されています。
 また前御法主日顕上人猊下は、
「『正直捨方便 但説無上道(正直に方便を捨てて 但無上道を説く)』(法華経一二四n)
という文があります(中略)この正直に方便を捨てるということは、方便にいつまでもとらわれて真実を見ないところが邪道であり、その邪を破すという意義であります。また無上道を説くのが正法を立てること、顕正であります。いわゆる『破邪顕正』が、この『立正』であります」(御法主日顕上人猊下御講義集立正安国論 五n)
と御講義されました。
 即ち「立正」とは、単に「正を立てる」ことのみではなく、その前提には必ず邪義邪法を破折する「破邪」があり、その上に正法を立てることが「顕正」となり、この「破邪顕正」こそが「立正」に篭められた大聖人の御聖意と拝すべきです。

「正」の真意(五重相対より)
 前郷法主日顕上人猊下は、「立正」の「正」の意義について、・第一に、因縁・因果を説かない外道の「邪」に対し、因果の理法を説く仏教を「正」とする(内外相対)
・第二に、利己的で狭小な内容の小乗経を宗旨とする 「邪」に対し、自分のみならず他をも導いていくという全体観の上から教えを説く大乗経を「正」とする(大小相対)
・第三に、真実に導くための仮りの方便である権大乗経を宗旨とする「邪」に対し、真実の一法である法華経を「正」とする(権実相対)
・第四に、時機の過ぎた像法時代の衆生を導く法華迹門を宗旨とする「邪」に対し、末法弘通の大法である法華本門を「正」とする(本迹相対)
・第五に、文上脱益の釈尊の仏法を宗旨とする日蓮他門家等の「邪」に対し、末法の御本仏日蓮大聖人の仏法、即ち文底下種の妙法蓮華経を「正」とする(種脱相対)
と、このように、五重相対より浅深勝劣して「正」の意義を明らかにされ、
「下種の本尊とその三大秘法こそが真の『立正』の『正』という意味であり、末法万年の下種仏法の弘通、化導の上にはっきりと示された大法であります」(同 九n)
と、本門の三大秘法こそが「立正」の「正」であると御教示されています。

「立正」の両字に三大秘法を含む
 日寛上人は、
「立正の両字は三箇の秘法を含むなり」(御書文段 六n)
と仰せられ、「立正」の二字には三大秘法を含み、三大秘法を立てることを、次のように釈されています。
「本門の本尊に約せば、正とは妙なり、妙とは正なり(中略)妙とは妙法蓮華経なり、妙法蓮華経とは即ち本門の本尊なり」(同n)
と、「正」とは即ち御本仏日蓮大聖人の悟りである「妙法蓮華経」の五字のことであり、その法体は「本門の本尊」のことであると御教示されています。まさに「正を立てる」とは、『観心本尊抄』に、
「一閻浮提第一の本尊、此の国に立つべし」(御書 六六一n)と仰せになられた一閻浮提第一の「本門の本尊」を日蓮大聖人が御建立あそばされたことであると明かされています。
 次に、
「本門の題目に約せば、謂わく、題目に信行の二意を具す(中略)正境に縁する故に信心即ち正し。信心正なる故に其の行即ち正なり、故に題目の修行を名づけて正と為すなり」(御書文段六n)
と、本門の題目には信行が具足することを明かされ、正しい本尊に縁して信心が正しくなり、信心が正しくなることから、「行」が正しくなることを明かされます。即ち正しい「信行を立てる」とは、本門の本尊を信じて南無妙法蓮華経と唱えることであり、これが「本門の題目」の上からの「立正」です。
 そして、
「本門の戒壇に約せば、凡そ正とは一の止まる所なり、故に一止に従うなり。一は謂わく、本門の本尊なり。是れ則ち閻浮第一の本尊なるが故なり(中略)故に本尊を以て一と名づくる者なり。止は是れ止住の義なり、既に是れ本尊止住の処なり、豈本門の戒壇に非ずや。立とは戒壇を立つるなり」(同n)
と御教示されています。
 「正」の字義を見ると「一」に「止」まると書きます。この「ことは、一閻浮提第一の本門戒壇の大御本尊のことです。
 「止まる所」とは、即ち止住の所在の地ということです。つまり、本門の本尊が在す所は本門の戒壇であり、中にも本門戒壇の大御本尊が御安置される奉安堂こそ、現時における「本門の戒壇」に当たるのです。
 さらに、『一期弘法抄』に、
「国主此の法を立てらるれば、富士山に本門寺の戒壇を建立せらるべきなり」(御書一六七五n)
と御教示の広布の暁に建立されるべき本門寺の戒壇が、「立正」の「正を立てる」の真意なのです。
 故に「立正」には、末法万年に弘通するところの本尊と題目と戒壇、即ち三大秘法の建立の義が含まれるのです。

「正義顕揚の年」を迎えて
 大聖人の御化導は『立正安国論』に示された破邪顕正の実践にあります。御歴代上人の申状にも「謗法を退治し、正法を立てらるれば云々」の言が存するように、この御精神は日興上人以来脈々と今に受け継がれています。
 御法主日如上人猊下は、本年「正義顕揚の年」の新年之辞において、
「正しく『立正』の『正』とは、末法一切衆生救済の秘法たる三大秘法の大御本尊にして、その正を立てるとは、今末法濁悪邪智謗法充満の世にあっては、全世界の民衆の心田に三大秘法の妙法蓮華経を下種結縁し折伏を行じていくことであります」(大日蓮 七五五号)
と、末法万年に亘って一切衆生を救済する三大秘法総在の戒壇の大御本尊を「正」とし、下種・折伏によって三大秘法の妙法蓮華経を弘通していくことが、「立正」の実践であると御指南されています。
 私たち法華講員は、この「立正」の意義を正しく拝し、地涌倍増と大結果の御命題達成に向かって折伏行に邁進し、混濁した世の中を真の安国に導くべく力強く、前進してまいりましょう。