日蓮正宗入門
宗旨建立750年慶祝記念出版委員会編
はじめに
現代の科学文明は急速な進歩を遂げ、私たちの生活様式は昔では考えられなかったほど便利なものになりました。しかしその反面、失業や家庭不和、青少年の非行など、現代人の抱える問題はますます多様化し、その苦悩はいっそう深くなっています。
 また通信技術の発達によって、私たちは瞬時に全世界の情報や知識を得ることができ、居ながらにして地球の隅々の人と対話ができる時代になっています。にもかかわらず世界の各地で民族の対立や領土問題・宗教紛争などによる愚かしい戦争があとを絶たないのはどうしたことなのでしょうか。
 これは、機械・技術であれ、情報・知識であれ、すべて人間から生み出されたものであり、これらが正しく用いられるか否かは人間の心によることを物語っています。
 このゆえに近年、多くの識者が「二十一世紀は心の時代」といっています。
 人間の心を正しくリードするためには、人間の生命全体を根底から解明しつくした智慧と的確な指標を規範としなければなりません。
 仏教は、人間の心のみならず、生命全体の実相を深く観達した仏の教えであり、現実に生きている人々に対して、人間はいかに生きるべきかという根本的命題を説き明かしたものなのです。
 現代のほとんどの人が、仏教は葬儀や法事のためのものとか、寺院は伽藍を誇示し歴史的遺物を保管しているところ、あるいは静寂な雰囲気によって心を癒す場所などと認識していますが、これらの見方は仏教本来の精神から外れたものです。
 釈尊が説かれた膨大な経典の中で、人間の生命を正しく説き明かし、
成仏の道を示した教えが法華経です。この法華経の真髄たる〈南無妙法蓮華経〉をもって、末法という濁悪の時代の人々を根本から救うべく出現されたのが〈日蓮大聖人〉であり、その教えを正しく受け継ぎ、真の個人の幸福と世界の平和実現のために正法を弘め、信仰を実践しているのが〈日蓮正宗〉なのです。
 この 『日蓮正宗入門』は、序編・本編・実践編という順序で構成されています。
 序編では、釈尊の仏教についてふれ、本編では、日蓮大聖人の御生涯とその教義、日蓮正宗の歴史などを紹介しています。さらに実践編では、日蓮正宗の信仰と実践を具体的に述べています。
 このように本書は、大聖人の仏法の正しさが体系的に理解できる内容となっていますから、本宗信徒にとっては必読の書として、また、日蓮正宗の信仰を知らない方にとっては、真実の仏法を知るための良き手引きとなることでしょう。

               宗旨建立七五〇年慶祝記念出版委員会