日蓮正宗の年中行事 
「大日蓮 平成24年 3月号」
宗旨建立会(立宗会) 
 立宗会(宗旨建立法要)とは、末法の御本仏日蓮大聖人が宗旨を建立し、立宗を宣言あそばされた建長五(一二五三)年四月二十八日を記念して御報恩申し上げる法要です。

立宗を決意された大聖人
 大聖人は十六歳の時、安房国(千葉県)清澄寺において道善房を師として出家得度され、京都や奈良などに十数年にわたって遊学研鑚されました。
 生まれながらにして、深い法華経の境地に立たれていた大聖人は、その遊学研鑚のなかから現実の世相をとおして、一切衆生の不幸の根源は、時代に不相応の低劣な邪法を信仰するところにあり、末法万年の時代を救うべき道はただ一つ、法華経寿量品の文底に秘し沈められた妙法蓮華経に帰依する以外にないとの裏付けを得られるとともに、その確信を一層強くされました。
 しかし、ひとたびこれを言い出せば、山のような大難が降り懸かり、身命にまで及ぶことは法華経の文に明らかでありますが、大聖人は、いかなる三障四魔が競い起こっても、末法万年の一切の民衆を暗黒の苦悩から解放しようとの大慈悲によって、ここに立宗を決意し、宣言の場所を師匠・道善房の住む清澄寺に定められました。


内証を宣示(三月二十八日)
 古来、宗門には、立宗に三月二十八日と四月二十八日の二回があったとの言い伝えがあり、三月二十八日は法界に対する内証の題目の開宣であり、顕正に即する破邪の説法が面とされるのに対し、四月二十八日は外用弘通の題目の開示であり、破邪に即する顕正の説法が面となっています。
 さらに、三月二十八日は少機のために大法を示されたのに対し、四月二十八日は万機のために題目を弘通せられた、との意義が拝せられます。
 三月二十八日を選ばれた主な理由は、幼い時から「日本第一の智者にしてください」と祈った清澄寺の虚空蔵菩薩への功徳回向と、師匠の道善房に対する報恩にあったのです。この日、大聖人は、一人、清澄山上の嵩ケ森に立ち、遠く太平洋の彼方に差し昇る日の出を待たれました。
 やがて、水平線上にその姿が現れると、起立合掌されていた大聖人の口から「南無妙法蓮華経、南無妙法蓮華経」と、末法万年の闇を照らす下種の題目が、厳かに熱誠を込めて力強く唱え始められました。
 大聖人は、御自身の胸中に具え給う題目をもって、太陽をはじめ全宇宙の生命に厳かな開宗の宣言を発せられたのです。この題目こそ、今まで誰人も唱え出すことのなかった自行化他にわたる題目です。
 悠久仏教史上二千余年の間に、いまだ誰人も説かなかった七文字の題目は、今ここに初めて、大聖人によって唱え出されました。
 インド応誕の釈尊の教えはもちろん、中国最高の碩徳と言われる天台大師、大学匠・妙楽大師も、そして日本天台宗の開祖・伝教大師等の教えも、たしかに法華経を中心としてはいますが、これらは修行を積み、善根の厚い者を対象とした本果の教法でありました。
 日蓮大聖人が唱え出された題目は、久遠元初の法華経の体であり、直達正観、即身成仏、すなわち一切の生命が、この法を信ずる一念で直ちに成仏するという前代未聞の教えです。あらゆるものをあるがままにおいて根底から救う仏法、その仏法が我が国、安房の地に初めて顕れたのです。
 凡眼をもって見れば、それは単に大聖人の肉声であったでしょう。しかし、仏眼をもってするならば、その声は一切の森羅万象を根本から揺り動かす大音声でありました。

立宗(四月二十八日)
 やがて、時は移って四月二十八日午の刻(正午)となり、清澄寺諸仏坊の持仏堂には、学問修行を終えて帰山した大聖人の説法を聞こうと、多くの僧俗が集まっていました。そこで、日蓮と改名された大聖人の本格的な立宗の第一声が朗々と響き渡ったのです。身命を賭した堂々たる気魄、さわやかで淀みのない弁舌、豊かな知識は、いつしか聴衆の心をしっかりとつかんでいました。
 しかし、説法が進むにつれ、その感嘆は驚きと憎しみに変わっていったのです。末法という時代の説明から、釈尊の仏法が既にカを失ったこと、既存の八宗、十宗等の頼むに足らぬ理由を理路整然と述べ、特に禅は天魔、念仏は堕地獄の法であることを強調されました。また、これらの謗法の諸宗を信仰する結果として、下剋上の気風が増長し、社会秩序の顛倒と道義の頽廃、天変地夭が起こることを喝破されました。
 結局、末法の民衆を救うことができる教えは、一切法の根源である南無妙法蓮華経以外にはなく、早く禅、念仏等の邪法を捨てて、この妙法を信ずべきであると勧められたのです。
 このような説法に対し、謗法の執着が強い地頭の東条景信は、かねて三月の説法を伝え聞いており、大聖人の説かれるところを理解せず、瞋りと憎しみを懐いて怨嫉誹謗の徒となり、のちには無間大城の苦を受けることとなったのです。
 しかし、下種の妙法の功徳は、地によって倒れた者が、また地によって立ち上がるように、これらの誹謗した者も、一度はその罪によって悪道に堕ちますが、それが縁となって逆に成仏への道が開かれるのです。


 立宗会の意義
 大聖人の立宗宣言は信と謗、善と悪の一切に対して行われたのであって、根本は大聖人の南無妙法蓮華経の一念、大慈悲の一念が国土・衆生・五陰の三世間にあまねく浸透し、知ると知らざるとにかかわらず、また信・謗のいかんにかかわらず、一切民衆と宇宙法界に妙法を下種されたところに、立宗宣言の究極の意義があると言えましよう。
 この上から、総本山においては、毎年三月二十八日に立宗内証宣示報恩会を、四月二十八日に立宗会を奉修し、宗祖日蓮大聖人の大慈大悲に対し奉り、御報恩謝徳申し上げております。
 この儀式に際して私達は、不退転の弘通誓願をなされた大聖人のお心を拝し奉り、いよいよ信心を強盛に、死身弘法の決意を新たにすべきであります。