教学ノート
   大白法 令和元年11月16日付
55ページ 化城宝処の譬
 化城宝処の譬えとは、法華経『化城喩品第七』に説かれる譬え話で、法華七喩(法華七喩)の第四番目に当たります。
 昔、非常に珍しい宝が無量にある場所がありました。そこは五百由旬(約1万キロ)も離れた場所で、山や谷、砂漠などの険しい道を通らなければ、たどり着くことはできません。
 その場所をめざした人々の中で、ただ一人、この道をよく知り、たいへん智慧の勝れている者がいました。そこで彼をリーダーとし、宝の場所をめざして出発しました。
 ところが、道が険しく人々は途中で疲れ果ててしまい、「宝物などどうでもよい、引き返そう」と言う者も出てきました。
 そこでリーダーは、「せっかくここまで来たのに帰ろうとするなんて、なんとかわいそうな人たちなんだ。励ましてあげよう」と考え、半分を過ぎた辺りに、立派な仮の城、つまり化城を設けたのです。
 そして、「もう恐れることも、引き返すことも必要ありません。この城に入れば心が安らかになり、体も回復して元気になるでしょう」と伝えました。
 人々は喜んで城に入り、一息ついて落ち着くと、「もうこれ以上望むものはない」と安心し満足しきってしまったのです。
 この様子を見たリーダーは、化城を吹き消し、人々に「この城は休息のために仮に造ったものです。皆さんが元気を取リ戻した今、化城は必要ありません。目的地は、すぐこの先です。さあ出発しましょう」と告げました。そして一同は再び出発して、ついに真の宝のある場所(宝処)にたどり着いたのです。
 この話の、勝れたリーダーとは衆生を救おうとされる仏、化城とは仏が衆生を法華経に導くために説かれた、声聞・縁覚・菩薩のための方便の悟り、宝処とは法華経による一仏乗の悟りで、成仏の境界のことです。
 この譬えの後、釈尊は、「迷いの中で苦しんでいる衆生は心が弱い。だから、初めから法華経を説かずに、まず仏道へと導く手段、方便として、声聞・縁覚・菩薩の三乗の低い教えを説いたのである。それはこの化城と同じで、本当の目的ではない。真実の目的は、衆生が成仏して大きな利益を得ることで、それは法華経という最高の教えによってのみ成し遂げられるのである」と説かれました。
 この『化城喩品』には、
「願わくは此の功徳を以て 普く一切に及ぼし我等と衆生と 皆共に仏道を成ぜん」(法華経 268㌻)
と、大乗の菩薩の精神である自利利他が説かれています。
 自利利他とは、自行化他と同じ意味で、自らの悟りのために修行することと、他の人を救うことです。この2つを共に行っていくことが大切です。
 私たちは大聖人様の教えを信じ、日々の信行に励むことによって、宝処である成仏の境界に至ることができるのです。