御法主日如上人御指南 
御法主上人猊下お言葉
唱題行
(平成31年1月2日 於総本山客殿)

 宗旨建立七百六十七年「勇躍前進の年」あけましておめでとうございます。
 皆様には、すがすがしく「勇躍前進の年」を迎え、決意も新たに、いよいよの御精進をお誓いのことと存じます。
 既に皆様方も御承知の通り、今、宗門は来たるべき平成三十三年・宗祖日蓮大聖人御聖誕八百年、法華講員八十万人体勢構築へ向けて、僧俗一致・異体同心の団結をもって、力強く前進をしております。
 私どもが御宝前に固く誓った法華講員八十万人体勢の構築は、すべての支部が身軽法重・死身弘法の御聖訓を奉戴し、全力を傾注して、なんとしてでも達成しなければなりません。
 そのためには、私ども一人ひとりが、御本仏大聖人の弟子檀那としての自覚と断固たる決意をもって、真剣に唱題に励み、その功徳と歓喜をもって敢然として折伏を行じていくことが肝要であります。
 さて『立正安国諭』を拝しますと、
「而るに盲瞽の輩、迷惑の人、妄りに邪説を信じて正教を弁へず。故に天下世上諸仏衆経に於て、捨離の心を生じて擁護の志無し。仍って善神聖人国を捨て所を去る。是を以て悪鬼外道災を成し難を致すなり。」(御書 二三七n)
と仰せであります。
 皆様には既に御承知の通り、『立正安国諭』は文応元(一二六〇)年七月十六日、日蓮大聖人御年三十九歳の時、当時の最高権力者・北条時頼に提出された一回目の国家諌暁書であります。
 内容を拝しますと、最初に、相次いで起こる天災・飢饉・疫病の原因は、世の人々が皆、正法を捨てて悪法を信じていることにより、国土を守護すべき善神が所を去って、悪鬼・魔神が住み着いているためとし、金光明経・大集経・仁王経・薬師経の四経の文を引いて、正法を信ぜず謗法を犯すことによって三災七難が起こると述べられております。そして社会を覆い、人々の生命を蝕んでいる一凶は法然の念仏であるとし、この一凶を断って布施を止め、正法に帰依するならば、一切の災難が消えて、平和楽土が実現すると述べられます。しかし、もし正法に帰依しなければ、七難のなか、まだ起こっていない自界坂逆難と他国侵逼難の二難が競い起こると予言され、そして速やかに「実乗の一善」に帰依するよう結んでおられます。
 ただいま拝読した御文は『安国論』
のなかの一文であり、初めに「而るに盲瞽の輩、迷惑の人、妄りに邪説を信じて正教を弁へず。故に天下世上諸仏衆経に於て、捨離の心を生じて擁護の志無し。」と仰せられておりますが、「盲瞽の輩」とは、すなわち目の不自由な人、つまり仏法の正邪が解らない人や、「迷惑の人」つまり教えが正しいか、間違っているか解らずに迷っている者は「妄りに邪説を信じて正教を弁へず」、すなわち妄りに邪説を盲信して正しい教えを弁えないために「天下世上諸仏衆経に於て、捨離の心を生じて擁護の志無し」、世間の多くの人々は仏に対し、また諸々のお経に対し、捨て去る心を生じて、正法を守ろうとする志がない。「仍って善神聖人国を捨て所を去る。是を以て悪鬼外道災を成し難を致すなり」、そのため諸天善神も聖人も、法味を味わうことができず
国を捨てて所を去り、代わって悪鬼・外道が来たって蟠踞し、災難を起こすのであると仰せられているのであります。
 すなわち、この御文は、世の中の多くの人々が正法を信ぜず、邪義邪宗の間違った教えを信ずることによって、悪鬼・外道が災いを起こし、様々な難が起きるのであると仰せられているのであります。
 されば、大聖人様は同じく『立正安国論』に、
「倩微管を傾け聊経文を披きたるに、世皆正に背き人悉く悪に帰す。故に善神国を捨てゝ相去り、聖人所を辞して還らず。是を以て魔来たり鬼来たり、災起こり難起こる。言はずんばあるべからず。恐れずんばあるべからず。」(同 二三四n)
と仰せられているのであります。
 総本山第二十六世日寛上人は、この御文のなかの「世皆正に背き人悉く悪に帰す」について、
「正とは三箇の秘法の事なり」(御書文段 九n)
と仰せられています。
 つまり末法において、「正」とは大聖人様の仏法、すなわち三大秘法の南無妙法蓮華経であります。「悪」とは日蓮正宗以外の宗教であり、世の中の人々が皆、大聖人に敵対して正法に背き、念仏をはじめ禅、真言等の邪義に帰依しているから、善神は国を捨てて相去り、国を護る聖人は所を辞して還らず、代わって魔が来たり鬼が来て、災いが起こり、難が起きるのであると仰せられているのであります。
 この御文を拝し、私どもは邪義邪宗を信ずるが故に、諸天善神がその国を捨て去り、悪鬼が乱入し、国土が衰退して災難が起き、多くの人々が塗炭の苦しみを味わうことになることをよく知り、一人でも多くの人に、一切衆生救済の秘法たる大聖人様の仏法を下種し折伏を行じていくことが、いかに大事であるかを認知し、なお一層の精進をもって折伏に励んでいかなければなりません。
 宗祖日蓮大聖人御聖誕八百年の大佳節まであと二年余、皆様にはいよいよ信心強盛に、講中一結・異体同心して、御宝前にお誓い申し上げた法華講員八十万人体勢構築を必ず達成し、もって広大無辺なる仏祖三宝尊の御恩徳に報い奉るよう心から念じ、本日の挨拶といたします。