御法主日如上人御指南 
12月度広布唱題行の砌
平成30年12月2日 
於総本山客殿

 本日は、本年度最後の広布唱題会に当たり、皆様には多数の御参加、まことに御苦労さまでございます。
 本年「行動の年」も、いよいよ残り一月となり、皆様には本年度の折伏誓願達成のため、さらに来たるべき平成三十三年・宗祖日蓮大聖人御聖誕八百年、法華講員八十万人体勢構築の実現へ向けて、講中一結して御奮闘のことと存じます。
 さて、大聖人様は『法華初心成仏抄』に、
「地獄には堕つるとも、仏になる法華経を耳にふれぬれば、是を種として必ず仏になるなり。されば天台・妙楽も此の心を以て、強ひて法華経を説くべしとは釈し給へり。譬へば人の地に依りて倒れたる者の、返って地をおさへて起つが如し。地獄には堕つれども、疾く浮かんで仏になるなり。当世の人何となくとも法華経に背く失に依りて、地獄に堕ちん事疑ひなき故に、とてもかくても法華経を強ひて説ききかすべし。信ぜん人は仏になるべし、謗ぜん者は毒鼓の縁となって仏になるべきなり。何にとしても仏の種は法華経より外になきなり。」(御書一三一六n)
と仰せであります。
 この御文は、法華経を強いて説いて、誹謗させて悪道に堕とすよりも、機にかなった念仏を説いて、発心させたほうがよいのではないかとの疑問に対して、答えられたものであります。
 すなわち「地獄に堕ちたとしても、仏に成る法華経を耳に触れるならば、それが種となって、必ず成仏の実を結ぶのであるから、たとえ相手が信じなくても、強いて法華経を説くべきである。それ故、天台大師も妙楽大師も、この心をもって強いて法華経を説くべしと釈されているのである。例えば、倒れた者が地面に手をついて起き上がるように、一時は地獄には堕ちるが、速やかに浮かんで仏に成るのである」と仰せられているのであります。
 されば、大聖人様は『一念三千法門』に、
「妙法蓮華経と唱ふる時心性の如来顕はる。耳にふれし類は無量阿僧祇劫の罪を滅す。一念も随喜する時即身成仏す。縦ひ信ぜずとも種と成り熟と成り必ず之に依って成仏す」(同一〇九n)
と、一念随喜の信心を示されるとともに、逆縁の功徳について述べられ、妙法を耳に触れた者は、たとえ信ぜず反対する人でも、その人の心田に仏種が植え付けられたことになり、それが種となり、熟となり、必ず成仏に至ると仰せられているのであります。
 なかんずく、末法当今の本未有善の衆生は、直接、法華経を誹謗していなくても、法華経を誹謗している邪義邪宗を信じて、知らず知らずのうちに法華経誹謗の罪を犯していることになり、地獄に堕ちることは疑いないのでありますから、とにかく法華経を強いて説くことが肝要である。なぜなら、信ずる者は仏と成り、誹謗する者も毒鼓の縁となって仏に成るからであると仰せられているのであります。
 「毒鼓の縁」とは、既に皆様も御承知のように、毒を塗った太鼓をたたくと、その音を聞いた者すべてが死ぬと言われております。つまり、謗法の衆生に法華経を説き聞かせることは、法華経に縁することになり、成仏の因となることを言いまして、これを逆縁と言うのであります。すなわち、順縁の衆生はもとより、逆縁の衆生であったとしても本因下種の妙法を聞かせることによって、正法と縁を結ばせ、将来、必ず救済することができるのであります。
 さらに、大聖人様は『十法界明因果抄』に、
「慳貪等無き諸の善人も謗法に依り亦謗法の人に親近し自然に其の義を信ずるに依って餓鬼道に堕することは、智者に非ざれば之を知らず。能く能く恐るべきか」(同 二〇八n)
と仰せられ、謗法の人に親近して、いつの間にか影響を受けて謗法に与同してしまうことが間々ありますが、それを避けるためには、とにもかくにも法華経を強いて説き聞かせることが肝要であると仰せられているのであります。なぜなら、謗法を破折することによって、己れ自身も与同罪を受けることなく、成仏の道を歩むことができるからであります。
 されば順縁・逆縁、信謗共に成仏の種子は法華経よりほかにはなく、もし世間の人が愚かな考えをもって、爾前権経によっても仏に成れると言うのであれば、なぜ仏は強いて法華経を説いて、謗ずる者も信ずる者も利益があると説かれたのであろうか。道心ある人は、よくよく心得なければならないと仰せられているのであります。
 もちろん、ここで「法華経」と仰せられているのは、末法今時においては、法華経の肝心たる本門寿量品文底秘沈の南無妙法蓮華経のことであります。
 故に、大聖人様は『観心本尊抄』に、
「釈尊の因行果徳の二法は妙法蓮華経の五字に具足す。我等此の五字を受持すれば自然に彼の因果の功徳を譲り与へたまふ」(同 六五三n)
と仰せられ、『聖愚問答抄』のなかには、
「此の妙法蓮華経を信仰し奉る一行に、功徳として来たらざる事なく、善根として動かざる事なし」(同四〇八n)
と仰せられているのであります。
 今、宗門は僧俗一致の体勢をもって、来たるべき平成三十三年・法華講員八十万人体勢構築の目標達成に向けて、力強く前進しております。
 特に、本年もいよいよ残りあと一月、皆様には唱題の功徳と歓喜をもって、勇躍として折伏を行じ、講中一結して折伏誓願を必ず達成され、もって御本仏の御照覧を仰ぎ奉り、一生成仏を期されますよう心から念じて、本日の挨拶といたします。