御法主日如上人御指南 
唱題行(1月2日)の砌
平成三十年一月二日 
於総本山客殿

 宗旨建立七百六十六年「行動の年」あけましておめでとうございます。
 皆様には、本年度の初登山に当たり、ただいまは唱題行に参加され、すがすがしく「行動の年」を迎えられ、決意も新たに、いよいよの御精進をお誓いのことと存じます。
 既に皆様も御承知の通り、宗門は今、僧俗一致・異体同心の団結をもって、来たるべき平成三十三年・宗祖日蓮大聖人御聖誕八百年、法華講員八十万人体勢の構築へ向けて、全力を傾注して力強く前進をしております。
 いつも申し上げていることでありますが、法華講員八十万人体勢の構築は、邪義邪宗の謗法の害毒によって塗炭の苦しみに喘ぐ多くの人々を救い、混迷を極めている末法今時の世情を浄化し、仏国土を実現するため、宗門の総力を結集して、なんとしてでも達成しなければならない、最も大事な目標であります。
 そのためには、私ども一人ひとりが断固たる決意をもって唱題に励み、その功徳と歓喜をもって、敢然として折伏を行じていくことが肝要であります。
 さて、大聖人様は『法華題目抄』に、
「何に況んや法華経の題目は八万聖教の肝心、一切諸仏の眼目なり。汝等此をとなえて四悪趣をなるべからずと疑ふか。正直捨方便の法華経には『信を以て入ることを得』と云ひ、双林最後の涅槃経には『是の菩提の因は復無量なりと雖も、若し信心を説けば、則ち已に摂尽す』等云云。夫仏道に入る根本は信をもて本とす」(御書 三五三n)
と仰せであります。
 この『法華題目抄』は、文永三(一二六六〕年正月六日、日蓮大聖人様御年四十五歳の時、清澄山で認められた御書でありまして、対告衆は従来、念仏を唱えていた女性と言われております。この女性は、日蓮大聖人様の教えを信ずるようになりましたが、まだ念仏に執着する心を捨てきれなかったので、それを打ち破るために認められたのが、この御書であると言われております。
 初めに「何に況んや法華経の題目は八万聖教の肝心、一切諸仏の眼目なり。汝等此をとなえて四悪趣をはなるべからずと疑ふか」と仰せでありますが、これは法華経の題目は、釈尊一代五十年の説法である八万聖教中の肝心であり、十方三世の諸仏の眼目として悟りを開かれたところの肝要なる法門である。しかるに汝等は、この題目を唱え奉る者は四悪趣、すなわち地獄・餓鬼・畜生・修羅に堕ちることはないとの仰せを疑うのかと、唱題の妙徳、すなわちお題目を唱える功徳のいかに大であるかを示されているのであります。
 次いで信心の大事を示されて、法華経には「信を以て入ることを得」と説き、涅槃経には「是の菩提の因は復無量なりと雖も、若し信心を説けば、則ち已に摂尽す」と仰せでありますが、「信を以て入ることを得」とは法華経譬喩品(法華経一七五n)の御文にして、智慧第一の舎利弗ですら、智慧によって仏に成ったわけではなく、信心によって悟ることができたことを挙げて、成仏のためにはいかに信が大事であるかを示されているのであります。また涅槃経には「仏果に至るべき菩提の因は、多種多様の方法を数えることができるけれども、もし信心の一つを挙げれば、そのなかにはすべての菩提の因を収め尽くしているのであって、信心よりほかにより良き仏果の因となるものはない」と信心がいかに大事であるかを説かれ、もって「夫仏道に入る根本は信をもて本とす」と成仏のためには信こそ肝要であると仰せられているのであります。
 されば『御義口伝』には、
「一念三千も信の一字より起こり、三世諸仏の成道も信の一字より起こるなり。此の信の字は元品の無明を切る所の利剣なり。其の故は、信は無疑曰信とて疑惑を断破する利剣なり。解とは智慧の異名なり。信は価の如く解は宝の如し。三世の諸仏の智慧をかうは信の一字なり。智慧とは南無妙法蓮華経なり。信は智慧の因にして名字即なり。信の外に解無く、解の外に信無し。信の一字を以て妙覚の種子と定めたり」(御書一七三七n)
と仰せられ、仏道にとっていかに信が大事であるかを御教示あそばされているのであります。
 今、宗門は僧俗一致・異体同心して、来たるべき平成三十三年・宗祖日蓮大聖人御聖誕八百年、法華講員八十万人体勢構築の誓願を達成すべく、各支部ともに総力を結集して前進しています。
 この時に当たり、我ら一同は大御本尊様に絶対の信を取り、万難を排し、いかなることがあろうとも法華講員八十万人体勢構築の誓願を達成すべく、全力を傾注して折伏に取り組まなければなりません。
 そのためには、
「異体同心なれば万事を成じ、同体異心なれば諸事叶ふ事なしと申す事は外典三千余巻に定まりて候(中略)日本国の人々は多人なれども、同体異心なれば諸事成ぜん事かたし。日蓮が一類は異体同心なれば、人々すくなく候へども大事を成じて、一定法華経ひろまりなんと覚へ候。悪は多けれども一善にかつ事なし」(同一三八九n)
との御金言を胸に、講中が異体同心・一致団結して折伏を進めていくことが、まことに肝要であります。
 どうぞ、皆様には今日の御登山を機に、さらに一段と決意を固め、折伏誓願を必ず達成されますよう心か願い、本日の挨拶といたします。