御法主日如上人御指南 
十月度広布唱題行の砌
平成二十八年十月二日 
於総本山客殿

 皆さん、おはようございます。
 本日は、十月度の広布唱題会に当たりまして、皆様には多数の御参加、まことに御苦労さまでございます。
 本年も既に四分の三を過ぎ、残りあと三月となりましたが、皆様には本年度の折伏誓願達成へ向けて、いよいよ御精進のことと存じます。
 もちろん、なかには既に本年度の折伏誓願を達成した支部もあり、来たるべき平成三十三年・法華講員八十万人体勢構築へ向けて順調に成果を挙げている所もありますが、未達成の支部にあっては、残りあと三月となったこれからが正念場であります。
 是非、各支部ともに異体同心・一致団結して、御本尊様にお誓い申し上げた誓願は、必ず達成されますよう心からお祈りいたします。
 さて、法華経化城喩品を拝しますと、「願わくは此の功徳を以て 普く一切に及ぼし 我等と衆生と 皆共に仏道を成ぜん」(法華経 二六八n)
とあります。
 この御文の前を拝しますと、
「仏様がこの世に出現されるまでは、十方はただ真っ暗で、三悪道がはびこり、また修羅道も盛んにして、天の諸衆であっても死せば悪道に堕ち、無量劫の間に仏より法を聞くこともなく、衆生は常に不善をなして身心は衰え、その罪の故に真の幸いを求めもしないで、邪教に囚われ、正しく振る舞うことを知らず、ために人々は苦しみ悩んでいた。このような時に、仏様が世に出現され、正しく悟りを示されたお陰で、我々の喜びは限りない。自分達ばかりではなく、ほかの一切の衆生も喜んで、いまだかつて覚えたことがない歓喜の心持ちを感じた。さらに、自分達が住んでいる御殿も光が加わって、たいへん美しくなった。これを仏様に差し上げますから、どうぞお納めください」(同 二六七n取意)
とあり、そのあと続いて、ただいま拝読した御文に至り、「願わくは此の功徳を以て 普く一切に及ぼし 我等と衆生と 皆共に仏道を成ぜん」と仰せられているのであります。
 すなわち、小乗経と異なり、大乗中の大乗たる法華経においては、自らが成仏するとともに、他人を救うことは一体であるとする、自行化他の信心こそが大事であると説かれているのであります。

大聖人様は『南条兵衛七郎殿御書』に、
「善なれども大善をやぶる小善は悪道に堕つるなるべし」(御書 三二三n)と仰せであります。すなわち、自分だけの幸せを求める信心は、たとえそれが善であったとしても、その善は「大善をやぶる小善」であり、「悪道に堕つるなるべし」と厳しく仰せられているのであります。
 そもそも、自分だけの幸せを求めて利他に欠けた、つまり折伏行に欠けた利己的な信心は、仏様が最も嫌った姿勢であります。爾前経において、二乗が永不成仏、すなわち永遠に成仏できないと嫌われたことも、ここに起因しているのであります。
 されば、私どもは一人ひとりが自行化他の信心に徹し、自らも強盛なる信心に励むとともに、邪義邪宗の害毒によって苦悩に喘いでいる多くの人々に対して、救いの手を差し伸べ、折伏を行じていくことが、今、最も大事なのであります。
 本年も残りあと三月、限られた時間ではありますが、講中一結・異体同心して、唱題に励み、その功徳をもって勇猛果敢に折伏に打って出れば、誓願を達成できないことはありません。
『法華初心成仏抄』には、
 仏になる法華経を耳にふれぬれば、是を種として必ず仏になるなり。されば天台・妙楽も此の心を以て、強ひて法華経を説くべしとは釈し給へり。譬へば人の地に依りて倒れたる者の、返って地をおさへて起つが如し。地獄には堕つれども、疾く浮かんで仏になるなり。当世の人何となくとも法華経に背く失に依りて、地獄に堕ちん事疑ひなき故に、とてもかくても法華経を強ひて説き聞かすべし」(同一三一六n)
と仰せであります。
 皆様には、この御金言を心肝に染め、残り三カ月間を有効に活用し、全支部が必ず誓願を達成されますよう心からお願いして、本日の挨拶といたします。