御法主日如上人御指南 
二月度広布唱題会の砌
平成二十八年二月七日 
於総本山客殿

 皆さん、おはようございます。
 本日は、二月度の広布唱題会に当たりまして、多くの方々が参加され、まことに御苦労さまでございます。
 今月は御承知の通り、宗祖日蓮大聖人御聖誕の月であります。
 日蓮大聖人様は今から七百九十四年前、貞応元(一二二二)年二月十六日、安房国東条郷片海(現在の千葉県鴨川市)に御聖誕あそばされました。
 御本仏宗祖日蓮大聖人様が末法に御出現あそばされることは、既に三千年の昔、釈尊が法華経において予証されているところであります。すなわち、釈尊は法華経神力品において、
「日月の光明の 能く諸の幽冥を除くが如く斯の人世間に行じて 能く衆生の闇を滅す」(法華経 五一六n)
と仰せられています。
 この御文について、大聖人様は『寂日坊御書』に、
「経に云はく『日月の光明の能く諸の幽冥を除くが如く、斯の人世間に行じて能く衆生の闇を滅す』と此の文の心よくよく案じさせ給へ。『斯人行世間』の五つの文字は、上行菩薩末法の始めの五百年に出現して、南無妙法蓮華経の五字の光明をさしいだして、無明煩悩の闇をてらすべしと云ふ事なり。日蓮等此の上行菩薩の御使ひとして、日本国の一切衆生に法華経をうけたもてと勧めしは是なり」(御書一三九三n)
と仰せであります。
 すなわち、神力品のこの御文こそ、末法に外用上行菩薩、内証久遠元初の御本仏日蓮大聖人が御出現されることを、釈尊が予証された御文であります。
 釈尊は、迹化の菩薩達が滅後の弘通を願い出たのを制止して、涌出品において、大地より上行菩薩を上首とする本化地涌の菩薩を呼び出し、法華経の肝要、妙法蓮華経を四句の要法に括って上行菩薩へ付嘱され、末法流布を託されたのであります。
 大聖人様は、その上行菩薩の再誕として末法に御出現あそばされましたが、しかし、上行菩薩としてのお立場はあくまでも外用のお姿であって、内証深秘の辺から拝すれば、大聖人様は久遠元初自受用報身如来の再誕であります。
 故に、総本山第二十六世日寛上人は『文底秘沈抄』に、
「若し外用の浅近に拠れば上行の再誕日蓮なり。若し内証の深秘に拠れば本地自受用の再誕日蓮なり。故に知んぬ、本地は自受用身、垂迹は上行菩薩、顕本は日蓮なり」 六巻抄 四九n)
と仰せられているのであります。
 すなわち、今、末法は釈尊の説かれた文上の法華経では、既に一切衆生の良薬とはならず、久遠元初の御本仏の御出現と、その御本仏の説かれる教法によって、末法本未有善の衆生の成仏得道が初めてかなえられるのであります。
 故に『高橋入道殿御返事』には、「末法に入りなは迦葉・阿難等、文殊・弥勤菩薩等、薬王・観音等のゆづられしところの小乗経・大乗経並びに法華経は、文字はありとも衆生の病の薬とはなるべからず。所謂病は重し薬はあさし。其の時上行菩薩出現して妙法蓮華経の五字を一閻浮提の一切衆生にさづくべし」(御書 八八七n)と仰せられ、また『上野殿御返事』
には、
「今、末法に入りぬれば余経も法華経もせんなし。但南無妙法蓮華経なるべし」(同一二一九n)
と仰せられているのであります。
 今、大聖人様が御所持あそばされるところの妙法は、法華経の題号としての妙法五字ではなく、久遠の本法たる妙法五字であります。
 この妙法五字は、釈尊をはじめ三世諸仏の成仏得道の根源の法であり、三世にわたって一切衆生を救済する根本の教えであります。久遠の本法たる妙法五字は、人即法・法即人の妙法蓮華経にして、人に約せば久遠元初自受用報身如来の再誕、末法御出現の御本仏宗祖日蓮大聖人であり、法に約せば久遠元初の本法そのものであります。
 今月は、末法の御本仏宗祖日蓮大聖人の御聖誕の月であり、私ども一同は、心から御本仏大聖人の御聖誕を奉祝申し上げるとともに、大聖人様の弟子檀那として、大聖人様の御遺命たる一天四海本因妙広宣流布を目指し、近くは平成三十三年・宗祖日蓮大聖人御聖誕八百年、法華講員八十万人体勢構築へ向かって、僧俗一致・異体同心して不自惜身命の戦いを展開し、全支部が必ず折伏誓願を達成し、もって御本仏宗祖日蓮大聖人の広大無辺なる御恩徳に報い奉るよう心から念じ、本日の挨拶といたします。