御法主日如上人御指南 
第三回
法華講中等部・高等部大会の砌
平成二十六年七月二十七日
於 総本山大講堂
 本日は、第三回法華講中等部・高等部大会、まことにおめでとうございます。
 皆様には、昨日から二日間にわたり、ここ本門戒壇の大御本尊まします総本山において行われた中等部・高等部合宿登山に参加され、まことに慶賀に堪えません。
 また、ただいまは中等部から二人、高等部から二人が登壇され、すばらしい体験発表をされましたが、四人とも、いずれも広布を担う固い決意と実践によって勝ち得た、まことに貴重ですばらしい発表であったと思います。
 皆様方も、この四人の方々の発表を聞かれ、それぞれが決意を新たにされたものと思います。
 さらに、今回の合宿登山を通して、一人ひとりが末法の御本仏宗祖日蓮大聖人様の本因下種の仏法を信行学にわたって学び、それぞれが大きな功徳と得難い体験を得たことと思いますが、各位には、是非とも今回、学んだことをこの場だけのものとせず、それぞれが身近な人をはじめ、一人でも多くの人々に対しまして、妙法のすばらしさを説き、下種折伏を行じ、もって来たるべき平成二十七年・日興上人御生誕七百七十年の誓願達成へ向けて尽力されますよう、心から願うものであります。
 さて、大聖人様は『諌暁『幡抄』に、
「今日蓮は去ぬる建長五年\[癸丑\]四月廿八日より、今年弘安三年太歳庚辰十二月にいたるまで二十八年が間又他事なし。只妙法蓮華経の七字五字を日本国の一切衆生の口に入れんとはげむ計りなり。此即ち母の赤子の口に乳を入れんとはげむ慈悲なり」
(御書一五三九n)
と仰せであります。
 すなわち、御本仏大聖人様の末法御出現の目的は、本因下種の妙法をもって、末法の一切衆生をしてことごとく成仏得道せしめるためであります。
 この御本仏大聖人様の一切衆生救済の大慈大悲のお心にお応えする途は、一人ひとりが大聖人様の御聖意を深く拝し、一天広布を目指して、折伏を行じていくことであります。
 特に、昨今の騒然とした国内外の状況を見ると、人心は極度に荒廃し、ために残酷で悲惨な事件や事故が多発し、政治、経済、医療関係など、いずれも混乱、腐敗、不況、不信等、混迷の度合いを深める一方、地震をはじめ天変地夭が頻発し、国外では内戦、テロ、飢餓をはじめ、地球温暖化による天候異変など、まさに『立正安国論』に示された悪世末法の世相そのままの姿を現じております。
 しかしながら、世間の多くの人達は、こうした異変と混乱が何によって起きるのか、その本当の原因が解らず、いたずらに喧噪を極めているばかりであります。
 大聖人様は、その原因を『立正安国論』に明示されまして、
「世皆正に背き人悉く悪に帰す。故に善神国を捨てゝ相去リ、聖人所を辞して還らず。是を以て魔来たり鬼来たり、災起こり難起こる。言はずんばあるべからず。恐れずんばあるべからず」(同二三四n)
と仰せられています。
 この『立正安国論』は、大聖人様が日本国の国民が頻繁に打ち続く、天変地夭、飢饉疫癘などによって重苦に責められ、塗炭の苦しみに喘いでいる悲惨なる状況を深く憂えられ、この惨状を救わんとして、末法の御本仏としての大慈大悲をもって、北条時頼ならびに万民一同に対して、御諌めあそばされたところの諫暁書であります。
 すなわち、大聖人様は正嘉元(一二五七)年八月二十三日の大地震をはじめ、近年より近日に至るまで頻発する天変地夭、飢饉疫癘等の惨状を見て、その原因は、世の中の人々が正法に背き、悪法を信じていることにより、国土万民を守護すべきところの諸天善神が所を去って、悪鬼・魔神が便りを得て住み着いているためであるとし、正法を信ぜず、悪法を信ずることによって、三災七難等の災難が起こると、法華経をはじめ薬師経、仁王経等の経証を挙げてその理由を述べられております。そして、これら不幸と混乱と苦悩を招いている原因は、すなわち謗法にあり、この謗法を対治して正善の妙法を立つる時、国中に並び起きるところの三災七難等の災難は消え失せ、積み重なる国家の危機も消滅して、安寧にして盤石なる仏国土が出現すると仰せられ、しかし、もし正法に背くようなことがあれば、七難のうち、まだ起きていない自界叛逆難と他国侵逼難の二難が競い起こると予言され、こうした災難を防ぎ、仏国土を建設するためには、一刻も早く謗法の念慮を断ち、
  「実乗の一善に帰」(同二五〇n)
するよう、諌められているのであります。
 「実乗の一善」とは、文上の法華経を指すのではなく、法華経本門寿量品文底独一本門の妙法蓮華経にして、三大秘法の随一、本門の本尊のことであります。
 すなわち、万民一同が謗法の念慮を断ち、三大秘法の大御本尊に帰依することが、国土を安んずる絶対不可欠な要件であるとお示しあそばされているのであります。
 これは、依正不二の原理により、正報たる我ら衆生が一切の謗法を捨てて、実乗の一善たる三大秘法の随一、本門の本尊に帰依すれば、その広大なる力用によって、我ら衆生一人ひとりの生命が浄化され、それが個から全体へ、衆生世間に及び、社会を浄化し、やがて依報たる国土世間をも変革し、仏国土と化していくと明示あそばされているのであります。
 反対に、我ら衆生の生命が邪義邪宗の悪法によって濁れば、その濁りが国中に充満し、依報たる国土の上に様々な変化を現じ、天変地夭となって現れてくるのであります。
 これが『立正安国論』に示された原理であり、この原理を体して、真の世界平和と仏国土実現のため、身軽法重・死身弘法の精神と勇猛果敢なる折伏を行じていくのが、我ら本宗僧俗の大事な使命であります。
 その使命を果たしていく上で大事なことは、大御本尊様に対する絶対的な確信と、「為せば成る」との固い信念、そして破邪顕正の弛まぬ実践、さらに揺るぎない異体同心の団結であります。
 平成二十七年の誓願達成まで、いよいよあと二百二十日余。全国の法華講員が老若男女を問わず、一致団結して誓願達成へ向けて、不退転の勇気と決意を持って、力強く折伏に次ぐ折伏を行じていけば、必ず誓願は達成できると、固く確信いたします。否、一人ひとりの幸せはもとより、全世界の平和と全人類の幸せ実現のため、何があっても、誓願は必ず達成しなければなりません。
 大聖人様は『種々御振舞御書』に、
「仏滅後二千二百二十余年が間、迦葉・阿難等、馬鳴・竜樹等、南岳・天台等、妙楽・伝教等だにもいまだひろめ給はぬ法華経の肝心、諸仏の眼目たる妙法蓮華経の五字、末法の始めに一閻浮提にひろまらせ給ふべき瑞相に日蓮さきがけしたり。わたうども二陣三陣つゞきて、迦葉・阿難にも勝れ、天台・伝教にもこへよかし」
(同一〇五七n)
と仰せであります。
 どうぞ、中等部・高等部の皆さんは、この「わたうども二陣三陣つゞきて、迦葉・阿難にも勝れ、天台・伝教にもこへよかし」との御本仏の御遺命を胸に刻み、身軽法重・死身弘法の精神をもって、いよいよ唱題と折伏に励み、中等部は中等部の、高等部は高等部の使命のもと、異体同心の団結をもって、誓願達成の戦いに進んで参加し、もって明平成二十七年・日興上人御生誕七百七十年、法華講員五〇%増の誓願を必ず達成されますよう心から念じ、本日の挨拶といたします。