御法主日如上人御指南 
 四月度広布唱題会の砌
 本日は、四月度の広布唱題会に当たり、海外からの御信徒をはじめ多くの方々が参加され、まことに御苦労さまでございます。
 本年も四月に入り、既に一年の四分の一が過ぎましたが、皆様には僧俗一致・異体同心して、日夜、折伏誓願達成へ向けて御精進のことと存じます。
 さて、昨今の国内外の情勢を見ますと、末法五濁悪世の世相そのままに混沌とした様相を呈しており、この先の不安を感じている方も少なくないと思います。
 我々はこうした混迷する現状を見て、この窮状を救えるのは、ただ末法の御本仏宗祖日蓮大聖人の三大秘法の仏法以外にはないことを、よくよく銘記すべきであります。
 既に『立正安国論』には、世の中が混乱する原因について、
「倩微官を傾け聊経文を披きたるに、世皆正に背き人悉く悪に帰す。故に善神国を捨て、相去り、聖人所を辞して還らず。是を以て魔来たり鬼来たり、災起こり難起こる。言はずんばあるべからず。恐れずんばあるべからず」(御書二三四n)
と仰せられています。
 世の中の混乱と不幸と苦悩の原因は、ひとえに「世皆正に背き人悉く悪に帰す」故であると仰せでありますが、その「正」とは三箇の秘法すなわち、本門の本尊・本門の題目・本門の戒壇の三大秘法の正法を指し、「悪」とは邪すなわち、邪義邪宗の謗法を指すのであります。すなわち、世間の人々が御本仏日蓮大聖人の三大秘法の仏法に背き、邪義邪宗の謗法に惑わされ、盲信しているがためてあります。
 したがって、この邪義邪宗の謗法の念慮を断ち、不幸と混乱の根源である諸宗の謗法を対治しなければ、一人ひとりの幸せはもとより、国土の安穏も、世界の平和も実現することができないのであります。
 故に『立正安国論』には、
「早く天下の静謐を思はゞ須く国中の謗法を断つべし」 (同二四七n)
と、厳しく謗法を破折されているのであります。
 また『曽谷殿御返事』には、
「謗法を責めずして成仏を願はゞ、火の中に水を求め、水の中に火を尋ぬるが如くなるべし。はかなしはかなし」(同一〇四〇n)
と仰せであります。
 まさしく破邪顕正の折伏なくして、己れ自身も、また多くの人々も真の幸せを築くことはできないのであります。
 よって大聖人様は『如説修行抄』に、
「権実雑乱の時、法華経の御敵を責めずして山林に閉ぢ篭りて摂受の修行をせんは、豈法華経修行の時を失ふべき物怪にあらずや。されば末法今の時、法華経の折伏の修行をば誰か経文の如く行じ給へる。誰人にても坐せ、諸経は無得道堕地獄の根源、法華経独り成仏の法なりと音も惜しまずよばはり給ひて、諸宗の人法共に折伏して御覧ぜよ」(同六七三n)
と仰せであります。
「権実雑乱の時」すなわち、今日の如き様々な邪義邪宗が跳梁跋扈している時、法華経の敵も責めず、摂受にこだわって折伏を行じない者は、法華経修行の時を失う物怪であると、厳しく御教示あそばされているのであります。
 また『法華初心成仏抄』には、
「とてもかくても法華経を強ひて説き聞かすべし。信ぜん人は仏になるべし、謗ぜん者は毒鼓の縁となって仏になるべきなり。何にとしても仏の種は法華経より外になきなり」(同一三一六n)
と仰せであります。
 まさしく一切衆生救済の最尊の慈悲行こそ折伏であり、その折伏は、妙法の話を聞いて信じた人はもちろんのこと、「毒鼓の縁」が示すように、たとえ聞く心がない人でも、やがて妙法を耳にした縁によって、必ず逆縁成仏することができるのであります。
 されば、今、我々はこれらの御金言を一人ひとりが心肝に染め、地涌の菩薩の眷属としての振る舞いと、異体同心の団結をもって、来たるべき明年の日興上人御生誕七百七十年、法華講員五〇%増の誓願達成へ向けて、破邪顕正の大折伏戦を実践していくことこそ、今、最も肝要であり、急務であります。
 誓願達成は、険しい道のりではありますが、あらゆる困難を強盛なる信心で乗りきり、誓願を達成した時の歓びは、また格別であります。
 されば『上野殿御返事』には、
「しばらくの苦こそ候とも、ついにはたのしかるべし」(同一四七九n)
と仰せであります。
 どうぞ皆様には、誓願達成を期して、講中一結して唱題に励み、その功徳と歓喜をもって折伏に打って出て、すべての支部が必ず折伏誓願を達成されますよう心から念じ、本日の挨拶といたします。