御法主日如上人御指南 
 法華講講頭会の砌
 平成二十六年度の講頭会に登山されまして、まことに御苦労さまでございます。
 既に皆様方も御承知の通り、今、宗門は来たるべき平成二十七年・三十三年の誓願達成に向けて、僧俗一致・異体同心して前進をしており、まことに大事な時を迎えています。
 なかんずく明年の平成二十七年には、いよいよ日興上人御生誕七百七十年の佳節をお迎えすることになりますが、我々はそれまでに、仏祖三宝尊にお誓いした法華講員五〇%増の誓願を、総力を結束して、すべての支部が必ず達成しなければなりません。
 時間的に言えば、あと一年であります。この一年の間にすべての支部が誓願を達成するのは、並大抵のことではないと思います。しかし、既に五〇%増の誓願を達成している支部もたくさんあります。ですから、やってできないわけではありません。「必ずやりきっていく」という決意を持って折伏に臨めば、諸天善神の加護もあって必ず誓願は達成できると思います。
 そして、もう一つ大事なことは、この誓願達成のためには、まず、講中が一致団結をしていくということであります。これは講中にとっても、また全国の法華講員全体にとってもそうであります。すべてが異体同心の団結をしていくということが、まことに大事であります。
 既に、大聖人様は『異体同心事』のなかで、
「異体同心なれば万事を成じ、同体異心なれば諸事叶ふ事なしと申す事は外典三千余巻に定まりて候。殷の紂王は七十万騎なれども同体異心なればいくさにまけぬ。周の武王は八百人なれども異体同心なればかちぬ。一人の心なれども二つの心あれば、其の心たがいて成ずる事なし。百人千人なれども一つ心なれば必ず事を成ず。日本国の人々は多人なれども、同体異心なれば諸事成ぜん事かたし。日蓮が一類は異体同心なれば、人々すくなく候へども大事を成じて、一定法華経ひろまりなんと覚へ候」(御書一三八九n)
と御教示あそばされております。
 法華講支部の中心者である講頭さんは、まずこの御金言をしっかりと肝に銘じていただきたいと思います。
 「異体同心なれば万事を成ず」と、大聖人様はおっしゃっております。この御金言をどこまで我々が、心身ともに信じきっていけるか。またそのために、どれだけ不自惜身命の修行ができるか、折伏ができるかということが、誓願達成の大きなポイントになると思います。
 そうしたなかで、異体同心の団結、その講中が一結していくための核となるのは、まず指導教師と講頭さんとの、信心を中心とした正しい関係であります。この関係がしっかりしていませんと、講中はばらばらになってしまいます。指導教師の指導を講中に正しく伝えていくとともに、講中の状況をしっかりと把握して、それを指導教師に伝えていく。万全の対策と活動方針を、そこでしっかりと立てていくことが大事であります。
 つまり講中が、広布の団体として健全な形で活動をしていくためには、まず中心となる核の部分がしっかりと構築されていなければならないということになります。それが指導教師と講頭さんとの関係であります。
 皆さん方の支部には、それぞれ法華講支部の規約があると思いますが、その「規約」には、講頭の役目として、
  「講頭は、本講を代表し、講務を掌理する。」
とあります。この「掌理」とは、物事を取り扱って処理するという意味であります。
 具体的に言えば、講頭さんが講中の基本方針、そして活動状況や成果等のあらゆる講中の状況を正しく知っていなければならないということであり、このことがまず前提条件になります。例えば、皆様方の講中で今、どのような形で折伏が行われているかを、講頭さんが知っていることが一番の基本であります。そして同時に、本年度の折伏成果はどのくらい進んでいるか、どれだけ遅れているかを、講頭さんが掌握していなければなりません。また、誓願達成までのスケジュール、青写真ができているかどうか、それらが計画的に調っているかどうか、ということなどであります。
 そして、そのためには必ず毎月、幹部会などを実際に行わなければいけません。幹部会もやらない、連絡もない、それではその講中はつぶれます。そのようなことにならないためには、講頭さんが中心となって講中をしっかりまとめていくということが大切であります。
 ですから、毎月必ず幹部会などを開催して、講中活動ならびにその結果について協議検討し、次へ向かって具体的な作戦を立てていくことが大事であります。こうした有機的な活動が大きな意味を持つのであります。
 さらに言えば、御登山の状況はどうか。支部総登山は約束した人数で登山しているかどうか。あるいは春季総登山会とか夏期講習会の登山が、きちんと登山できているかどうか。三〇%しかいっていないということがあれば、講預さんとしてどうしますか。
 それ以前に、自分の講中の状況をどれだけ知っているかどうか。状況を知らなければ、対策を練ることもできません。ですから講頭さんは、講中をよく掌握しなければならないのです。まさに「掌理」する必要があるわけで、そのことが講頭さんの役目としてたいへん大事なのであります。
 もう少し言えば、御講の参詣状況はどうなっているか。皆さん方の講中でも毎年、誓願を達成しておりますから、当然、支部の人数は増えているはずであり、御講の参詣数も増えていくはずです。ところが、実際に講頭さん方は、自分の支部が御講にどれだけ参詣しているのか、知っていますか。参詣者が増えているのか、減っているのか、御存じでしょうか。それも判っていなければ、次の対策も立てられません。このような大事な役目が講頭さんにはあると思います。
 したがって、指導教師と講頭さんとの間で、提起されてきた色々な問題をよく検討していくべきであり、健全な形での講中活動を図っていくことが大事であると思います。
 また、あらゆる講中活動を掌握していなければなりませんが、具体的に言えば、第一に折伏であり、次に御講の参詣、そして登山参詣という、基本的な信心活動の原点というものがありますから、この三つを講頭さんはしっかりと掌握していただきたい。
 そして、その次に、もしそれが思うようにいってないとなれば、どうするかをしっかりと検討しなければなりません。講中幹部とよく相談し、そして指導教師に伝え、僧俗一体となって、誓願達成のためにはどうするかを考えなければならないのです。
 折伏をして、講員数は増えたはずだけれども、御講の参詣者や登山者が少ないとなれば、どうすればいいでしょうか。この責任はやはり指導教師と講頭さんにあるのであり、指導教師と講頭さんが本当に一体となって講員さんを導いていかなければならないのです。このことを講頭さん方は、よく知っていただきたいと思います。
 このなかにはいないと思いますが、毎月の御講には必ず参詣しておられますね。御講に参詣できていないようではだめですよ。御講というのは、月に一度、御信徒がお寺に集まって、御住職の法話をお聞きになり、講中幹部の挨拶等があって、「さあ、それでは頑張ろう」という決起の場であります。大聖人様に仏恩報謝をするということは、大聖人様に折伏を誓うことなのであります。その大事な御講に、もし講頭さんが参詣していないのであれば、それはもう、講中はばらばらになってしまいます。
 これは講頭さんの大事な役目です。地味ではあるけれども、その地道な一歩一歩の戦いが、講中活動に実は大きく影響しているということを、御存念いただきたいと思います。
 ただいまも申し上げましたように、講頭さんは講中の様々な現状を知らなければなりません。講中を正しく「掌理」し、広宣流布への道を進んでいくための作戦を立てるには、まず自分の講中の現状、現実の姿を知ることが大事だと思います。
 そのような意味からすれば、講頭職というのは、単なる名誉職ではありません。名誉だけでは講頭はつとまりません。実際に講中信徒の代表として、広宣流布への戦いに先陣を切っていくのが講頭さんの大事なお役目であります。厳しい戦いになるとは思いますが、その厳しさを乗り越えていったところに、本当にすばらしい功徳があるのではないでしょうか。
 楽をして成果を待つなどということは、懈怠謗法と同じであります。苦労して苦労して、悩んで悩んで悩みぬいて、講中と共に前進するところに必ず仏祖三宝様の御照覧があり、大きな功徳を頂けるのであります。
 つまり、講頭さんは講中活動の中心者でなければならないのです。指導教師と一体となって講中の健全な活動の中心となり、そして必ず全支部が、来たるべき明年の日興上人御生誕七百七十年の佳節までに、所期の目的である法華講員五〇%増を達成していただきたいと思います。
 もう一度申し上げますが、その戦いはけっして楽な戦いではないと思います。ですが、その楽でない戦いをするから、本当に功徳があるのではないでしょうか。楽な戦いに功徳などはありません。厳しい戦いであるからこそ、我々は大きな功徳を頂戴できるのであります。
 この功徳は講頭さんだけにとどまらず、講中みんなに大きな功徳が及ぶわけであります。講頭さんの存念一つで、講中のみんなが功徳を頂いて喜ぶか、あるいは残念がるか。それはまさしく、講頭さん方一人ひとりの一念にあるということを、よく承知していただきたいと思います。
 たいへん厳しいことを縷々申し上げましたが、なにしろ平成二十七年の誓願達成までは、残り一年、十二カ月しかありません。この間にどれだけ、我々が死身弘法の精神で御奉公できるか。その先陣を切るのが、各講中にあっての講頭さんであることを重々御承知あって、これからのさらなる御精進をお願いする次第であります。

(講頭会終了に当たって、御法主上人より再び御指南を腸る。)
 ただいま、講頭会議長の永井委員長から今回の講頭会の内容につきまして、あらあら報告を受けました。
 一つ、感じますことは、いよいよ明年の日興上人御生誕七百七十年を控えて、一人ひとりの講頭さん方の、真剣に取り組んでいく姿勢というものを感じました。
 先程も申し上げましたけれども、戦いに勝利する秘訣は、ただ一つ、異体同心の団結であります。
 ですから、まず、全国の講頭さんがしっかりと異体同心をする。その講頭さん方の異体同心の輪が、さらに講中に広がっていって、講中が異体同い心の絆で結ばれていくということが大事ではないかと思います。
 もちろん、我々の戦いは、「好事、魔多し」 ですから、色々なことが起こるのは当然であります。
 極端な話をいたしますと、大聖人様の御在世当時でも、熱原法難を見ても判るように、三位房とか色々な者が出てきました。また、日興上人の御時には、正義をお護り申し上げたお方は日興上人ただお一人だけであり、六老僧のうちの五人は、みんな師敵対の詩法を犯す結果となりました。
 もともと、戦いというのは、本当に正義を貫いていこうとすると、そういうことがたくさんあるのです。
 けれども、それらの魔を打ち破っていくところに、我々の信心があるわけでありますから、どんな苦しいことがあっても、諸口貝さんを励まし、常に異体同心の心を持って、誓願達成に向けて御精進をいただきたいと思います。
 広宣流布のために、誓願達成のために、文字通り、我々が不日情身命の信念を持ち、その覚悟で修行を続けていくならば、必ず私達は一生成仏を果たすことができると思います。
 そして、その要になるのが皆様方、講頭さんであることをよくよく御認識いただいて、これからの御精進を心から願うものであります。
  本日は、たいへん御苦労さまでございました。