御法主日如上人御指南 
 三月度広布唱題会の砌
 本日は、三月度の広布唱題会に当たり、皆様には多数の御参加、まことに御苦労さま
でございます。
 本年も既に三月に入りましたが、皆様には僧俗一致・異体同心して、日夜、折伏誓願
達成へ向けて御精進のことと存じます。
 前にも申し上げたことでありますが、第二祖日興上人の御生誕は三月八日でありま
す。したがって、我々は御生誕七百七十年を迎える平成二十七年の三月八日までには、
なんとしてでも誓願は必ず達成しなければなりません。
 すなわち、誓願達成の成否を決定するこれからの一年間の戦いはまことに大事であ
り、全国の各支部はこの戦いに完全勝利すべく、僧俗一致の体勢を調え、折伏に継ぐ折
伏をもって誓願達成の戦いに臨んでいただきたいと思います。
 そもそも、折伏は一切衆生救済の最尊の慈悲行であります。
 この折伏を断固たる決意と勇気をもって実践するためには、常日ごろからしっかりと唱題を重ね、その功徳をもって折伏に当たることが大事であります。
 されば『持妙法華問答抄』には、
「願はくは『現世安穏後生善処』の妙法を持つのみこそ、只今生の名聞後世の弄引
なるぺけれ。須く心を一にして南無妙法蓮華経と我も唱へ、他をも勧めんのみこ
そ、今生人界の思出なるべき」(御書三〇〇n)
と仰せであります。
 私どもはこの御金言を拝し、しっかりと唱題を重ね、折伏を行じ、もって自行化他に
わたる信心に励むところに、仏道修行の要諦と真の即身成仏義があることを知るべきであります。
 一方、世の中の有り様を見ますると、多くの人々が末法濁悪の世相にまみれて本心を失い、ために国土に災難を呼び、人心が撹乱し、塗炭の苦しみに喘いでいるのが現状であります。その原因は、既に大聖人様が『立正安国論』等において御指南あそばされている通り、ひとえに邪義邪宗の謗法の害毒にあることを忘れてはなりません。したがって、この謗法を対治しないかぎり、国土の安穏と人々の真の幸せは到来しないのであります。
 されば『立正安国論』には、
「早く天下の静謐を思はヾ須く国中の謗法を断つべし」(同二四七n)
と仰せられ、また『曽谷殿御返事』には、
「謗法を責めずして成仏を願はゞ、火の中に水を求め、水の中に火を尋ぬるが如くなるべし。はかなしはかなし」 (同一〇四〇n)
と仰せられているのであります。
 既に御承知の通り、今、宗門は国の内外を問わず、総力を結集して来たるべき平成二十七年・法華講員五〇%増の誓願達成へ向けて前進しております。しかしまた、我々が断固として折伏を行じていけば、様々な障害や難が競い起こることも必定であります。
 しかし『椎地四郎殿御書』には、
「大難来たりなば強盛の信心弥々悦びをなすべし。火に薪をくわへんにさかんなる事なかるべしや。大海へ衆流入る、されども大海は河の水を返す事ありや。法華大海の行者に諸河の水は大難の如く入れども、かへす事とがむる事なし。諸河の水入る事なくば大海あるべからず。大難なくば法華経の行者にはあらじ」
(同一五五五n)
と仰せであります。
 我々はこの御金言を拝し、行く手にいかなる大難が競い起きようが、大御本尊の広大なる功徳を確信し、「大難来たりなば強盛の信心弥々悦びをなすべし」との御教示を心肝に染めて、一意専心、誓願達成へ向けて前進していくことが大事であります。
 そもそも、大難が競い起きることは、
「難来たるを以て安楽と意得べきなり」(同一七六三n)
との御金言もある通り、過去遠々劫からの罪障を消滅する絶好の機会の到来であり、かかる時にこそ、ますます強盛なる信心をもって大難に立ち向かっていくことが肝要であります。
 大難と対峙した時、逃げるから負けるのであって、一層の信心をもって敢然として立ち向かっていくことが肝要なのであります。そうすれば、大難も必ず消滅することができるのであります。
 されば『四条金吾殿御返事』には、
「法華経の御信心強盛なれば大難もかねて消え候か。是につけても能く能く御信心あるべし」(同一二九二n)
と仰せであります。
 言い換えれば、我ら末法の衆生は難を恐れていたのでは、過去遠々劫からのたび重なる罪障も、難も消滅することはできません。
よって同抄の前文には、
「摩訶止観第八に云はく、弘決第八に云はく『必ず心の固きに仮って神の守り則ち強し』云云。神の護ると申すも人のい心つよきによるとみえて候。法華経はよきつるぎなれども、つかう人によりて物をきり候か」(同n)
と仰せであります。
 たとえ、いかなる困難や障害が惹起しょうが、無疑曰信の信に住し、微動だにしない強盛な信心があれば、転迷開悟の大功穂を必ず享受することができるのであります。
 ただし、
「叶ひ叶はぬは御信心により候べし」(同一五一九n)
と仰せの通り、我らの願いは、我々自身の信心いかんによって決まることを、よくよく銘記すべきであります。
 どうぞ皆様には、誓願達成にとって成否を決する最も大事な本年、一人ひとりがしっかりと唱題を重ね、その功徳と歓喜をもって折伏に打って出て、誓願を必ず達成されますよう心から念じ、本日の挨拶といたします。