御法主日如上人御指南 
 唱題行(1月31日)の砌
 本年一月度の唱題行最終日に当たり、一言申し上げます。
 元旦から始めました本年一月度の唱題行も、本日をもって終了いたしますが、皆様には一カ月間、まことに御苦労さまでございました。
 さて、今、宗門は全国の各講中ともに、来たるべき平成二十七年・日興上人御生誕七百七十年、法華諸員五〇%増の誓願達成を目指して、僧俗一致・異体同心して力強く前進しております。
 なかんずく、本年は日興上人御生誕七百七十年の佳節を明年に控え、各講中ともに総力を結集して、御生誕の三月八日までには、なんとしてでも法華講員五〇%増の誓願を達成すべく、一丸となって折伏に励んでいるところであります。
 もちろん、本年度の戦いはけっして楽なものではなく、厳しいものになりますが、しかし、世間でも、
「艱難、汝を玉にす」
という言葉がありますように、あらゆる困難を乗りきり、敢然として広布への達を進むところに、信仰者としての成長と計り知れない大きな功徳を享受することができるのであります。
 そもそも、折伏は一切衆生救済、仏国土実現の唯一最善の方途であり、それは同時に自らを一生成仏に導く最高の仏道修行でもあります。
 故に『持妙法華問答抄』には、
「『現世安穏後生善処』の妙法を持つのみこそ、只今生の名聞後世の弄引なるべけれ。須く心を一にして南無妙法蓮華経と我も唱へ、他をも勧めんのみこそ、今生人界の思出なるべき」(御書三〇〇n)
と仰せられているのであります。
 しかるに、昨今の世情は皆様方も重々御承知のように
末法の様相そのままに五濁爛漫として、人心は極度に悪化し、騒然として喧噪を極めるばかりであります。
 それではいったい、その混乱と不幸の原因はどこにあるかといえば、既に『立正安国論』にお示しの如く、すべて謗法の害毒にあるのであります。つまり、謗法の害毒によって衆生の煩悩がますます強盛となり、それによって生命それ自体が濁ってくるということであります。この煩悩の最たるものは何かといえば、貪瞋癡の三毒であります。貪とは貪リ、瞋とは瞋り、癡とは癡か、ものの道理が解らない、仏法の道理が解らない、この貪瞋癡の三毒が主なものであります。つまり、それによって衆生の命、生命それ自体が濁ってくるのであります。その生命の濁りが衆生世間全体に及び、これらの濁りが時代全体の濁りを生むことになるのであります。
 この五濁にまみれた末法の衆生を救い、乱れに乱れた世の中を救済しうる唯一の正法こそ、末法の御本仏宗祖日蓮大聖人様の仏法であります。
 故に『寂日房御書』には、
「『日月の光明の能く諸の幽冥を除くが如く、斯の人世間に行じて能く衆生の闇を滅す』と此の文の心よくよく案じさせ給へ。『斯人行世間』の五つの文字は、上行菩薩末法の始めの五百年に出現して、南無妙法蓮華経の五字の光明をさしいだして、無明煩悩の闇をてらすべしと云ふ事なり。日蓮等此の上行菩薩の御使ひとして、日本国の一切衆生に法華経をうけたもてと勧めしは是なり」(同一三九三n)
と仰せのように、外用上行菩薩の再誕、内証久遠元初自受用身の御本仏宗祖日蓮大聖人の御出現と、その説かれる妙法五字の教法によって、末法の衆生は初めて無明煩悩の闇を払い、救われるのであります。
 されば私どもは、いよいよ明年、日興上人御生誕七百七十年の佳節を迎えるに当たり、日興上人様が『日興遺誡置文』に、
 「未だ広宣流布せざる間は身命を捨てゝ随力弘通を致すべき事」(同一八八四n)
と仰せられた御指南を一人ひとりがしっかりと心肝に染め、一意専心、折伏誓願達成へ向けて前進をしていくことが、今、最も大事であることを銘記し、いよいよ御精進くださることを念願し、本日の挨拶といたします。