御法主日如上人御指南 
御法主上人猊下お言葉
6月度 広布唱題会の砌
(令和2年6月7日 於総本山客殿)

 今月の総本山における広布唱題会は、新型コロナウイルス感染症による規制によりまして、先月に続き、山内僧侶のみの参加となりましたが、かかる時にこそ、私どもは一日も早い回復を願い、いよいよ信心強盛に異体同心・一致団結して、自行化他の信心に住し、この苦難を乗り越えていかなければならないと思います。
 さて、大聖人様は『中務左衛門尉殿御返事』のなかで、疫病について御指南あそばされております。今、解りやすく、口語体にして申しますと、
「今の日本国に、去年から今年にかけて流行している疫病は、四大、すなわち地・水・火・風の不順によって起こる四百四病ではないから、たとえ名医である華陀や扁鵲の治療を受けても治るものでもない。また、小乗教や権大乗数の教えをもって治るような軽いものでもない。故に、諸宗の者達がいかに祈っても、その甲斐はない。否、かえって重くなるだけである。また、たとえ今年は一時止むとしても、年々に募って、最後に一大事が起こってのちに、初めて治まるのかも知れない。法華経の譬喩品には、病の根源を知らずして、その病を治療すれば危険なることを説いて、『もし、医術に依って病を治療すれば、他の病を併発し、もしくは病気の勢いを増し、もしくは死に至るであろう』とある。また涅槃経には『王舎城の阿闍世王が皮膚病にかかった時も、それは心から起こった病気であって、単なる肉体的な病気ではないから、医薬をもって治療しても、けっして治る道理がない』と説かれている。そこで妙楽大師も涌出品の『文句記』に『智者はその起因を知り、蛇は自ら蛇を知る』と言われている。今の疫病は、かの阿闍世王の皮膚病のようなものである。かの阿闍世王の皮膚病が釈尊でなければ治らなかったように、今の疫病は単なる肉体的疾患ではなくして、謗法に起因するのであるから、その疫病を除くのは法華経でなければ治することはできない」(御書一二四〇n取意)
と仰せられています。
 まさに、猛威を振るった疫病も、根本的には法華経、すなわち本門寿量品文底下種の南無妙法蓮華経の良薬でなければ治することはできないと仰せられているのであります。
 されば『太田入道殿御返事』には、
「平等大慧妙法蓮華経の第七に云はく『此の経は則ち為れ閻浮提の人の病の良薬なり。若し人病有らんに、是の経を聞くことを得ば病即ち消滅して不老不死ならん』云云」(同 九一一n)
と、妙法の広大なる功徳について、かくの如く仰せられているのであります。
 今、日本をはじめ世界に蔓延している新型コロナウイルス感染症も、根本的にはこの御教示の通り、妙法蓮華経の大良薬をもって治することが肝要であることを知るべきであります。
 大聖人様は『上野殿御消息』に、
「然る間釈迦・多宝等の十方無量の仏、上行地涌等の菩薩も、普賢・文殊等の迹化の大士も、舎利弗等の諸大声聞も、大梵王・日月等の明主諸天も、八部王も、十羅刹女等も、日本国中の大小の諸神も、総じて此の法華経を強く信じまいらせて、余念なく一筋に信仰する者をば、影の身にそふが如く守らせ給ひ候なり。相構へて相構へて、心を翻さず一筋に信じ給ふならば、現世安穏後生善処なるべし」(同 九二三n)
と仰せであります。
 されば今こそ、一人ひとりが妙法の広大無辺なる功徳を拝信し、いよいよ強盛に自行化他の信心に励み、もっていかなる病魔も打ち砕き、力強く前進していくことが肝要であります。
 以上、皆様のいよいよの御精進を心から念じ、本日の挨拶といたします。