御法主日如上人御指南 
御法主上人猊下お言葉
広布唱題会
(令和元年7月7日 於総本山客殿)

 本日は、総本山における七月度の広布唱題会に当たりまして、皆様には御繁忙のところを御登山され、まことに御苦労さまでございます。
 既に皆様方も御承知の通り、七月は宗祖日蓮大聖人様が文応元(一二六〇)年七月十六日に、宿屋左衛門尉入道を介して時の最高権力者である北条時頼へ『立正安国論』を上呈された月であります。
 『安国論御勘由来』を拝しますと、
 正嘉元年太歳丁巳八月二十三日戌亥の時、前代に超えたる大地振。同二年戊午八月一日大風。同三年己未大飢饉。正元元年己未大疫病。同二年庚申四季に亘りて大疫已まず。万民既に大半に超えて死を招き了んぬ。而る間国主之に驚き、内外典に仰せ付けて種々の御祈祷有り。爾りと雖も一分の験も無く、還りて飢疫等を増長す。日蓮世間の体を見て粗一切経を勘ふるに、御祈請験無く還りて凶悪を増長するの由、道理文証之を得了んぬ。経に止むこと無く勘文一通を造り作し其の名を立正安国論と号す。文応元年庚申七月十六日辰時、屋戸野入道に付し故最明寺入道殿に奏進し了んぬ。此偏に国土の恩を報ぜんが為なり。(中略)日蓮正嘉の大地震、同じく大風、同じく飢饉、正元元年の大疫等を見て記して云はく、他国より此の国を破るべき先相なりと。自讃に似たりと雖も、若し此の国土を毀壊せば復仏法の破滅疑ひ無き者なり。」(御書三六七n)
と仰せであります。
 大聖人様は、天変地夭、飢饉疫癘遍く天下に満ち、混沌とした末法濁悪の世相を深く憂えられ、国土退廃の根本原因は邪義邪宗の謗法の害毒にあると断ぜられ、もし邪義邪宗への帰依をやめなければ、自界叛逆・他国侵逼の二難をはじめ、様々な難が必ず競い起こると予言されたのであります。こうした災難を防ぐためには、ただ一つ、
「汝早く信仰の寸心を改めて速やかに実乗の一善に帰せよ」(同二五〇n)
と仰せられて、仏国土を実現するためには一刻も早く謗法の念慮を断ち、「実乗の一善」に帰することであると諌められているのであります。
 「実乗の一善」とは、大聖人の元意は文上の法華経ではなくして、寿量品文底独一本門の妙法蓮華経のことであり、三大秘法の随一、大御本尊のことであります。すなわち、この大御本尊に帰依することが、国を安ずる最善の方途であると仰せられているのであります。
 また、総本山第二十六世日寛上人は「立正」の両字について、
「立正の両字は三箇の秘法を含むなり」(御書文段六n)
と仰せであります。
 すなわち「立正」とは、末法万年の闇を照らし、弘通するところの本門の本尊と戒壇と題目の三大秘法を立つることであり、国土安穏のためには、この三大秘法を立つることこそ肝要であると仰せあそばされているのであります。
 また「安国」の両字については、「文は唯日本及び現在に在り、意は閻浮及び未来に通ずべし」(同五n)
と仰せられています。
 つまり「国」とは、一往は日本国を指しますが、再往は全世界、一閻浮提を指しているのであります。
 『立正安国論』は、その対告衆は北条時頼であり、予言の大要は自界叛逆難・他国侵逼難の二難でありますが、実には一切衆生に与えられた諌言書であります。
 また、一往は専ら法然の謗法を破折しておりますが、再往元意の辺は広く諸宗の謗法を破折しているのであります。
 されば『立正安国論』は、一往付文の辺では、当時の為政者に対する諌言書でありますが、再往元意の辺から拝するならば、末法の一切衆生に対し、自行の信心のみならず、化他行の折伏を行じ、立正安国の実現を図るべきことを指南あそばされた書であります。
 今、宗門は、来たるべき令和三年・宗祖日蓮大聖人御聖誕八百年、法華講員八十万人体勢構築の実現へ向けて、各支部ともに総力を結集して前進しております。この目標達成のためには、まず講中の老若男女すべての人が心を一つにして、誓願達成へ向けて、共に唱題に励み、共に一致団結して折伏を行じていくことが最も肝要であります。
 特に、誓願達成までいよいよあと一年半、すべての支部は、まず本年度の折伏誓願を必ず達成し、もって来たるべき令和三年・法華講員八十万人体勢構築の実現へ向けて力強く前進されますよう心から念じ、本日の挨拶といたします。